出版社内容情報
そのめざましい活躍から、1980年代には推理小説界に「新本格ブーム」までを招来した名探偵・屋敷啓次郎。行く先々で事件に遭遇するものの、驚異的な解決率を誇っていた――。しかし時は過ぎて現代、ヒーローは過去の事件で傷を負い、ひっそりと暮らしていた。そんな彼を、元相棒が訪ねてくる。資産家一家に届いた脅迫状をめぐって若き名探偵・蜜柑花子と対決から、屋敷を現役復帰させようとの目論見だった。人里離れた別荘で巻き起こる密室殺人、さらにその後の名探偵たちの姿を描いた長編ミステリ。第23回鮎川哲也賞受賞作、待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
麦ちゃんの下僕
192
シリーズ第2作『密室館殺人事件』が文庫化されたのを機に、まずは第1作から読んでみようと。2013年度の「鮎川哲也賞」受賞作。30代の時、そのめざましい活躍から1980年代の「新本格ブーム」を引き起こしたとされる“伝説の名探偵”屋敷啓次郎…今は60代となりすっかり凋落してしまった彼の下を、かつての相棒だった元刑事が訪れて…というお話。もちろん事件&謎解きのシーンは何度もありますが…あくまでも作品のテーマは“名探偵だった男”の生き様ということで、ミステリーとして読むよりは人間ドラマとして読むのがオススメです。2021/08/28
Bugsy Malone
91
1980年代、物語は一斉を風靡した名探偵屋敷啓次郎の少々鼻持ちならないオレという一人称による自信に満ちた解決編から始まる。そして30年後、その名声は老いた屋敷から若き名探偵蜜柑花子に移り変わっていた。再起と探偵生命を賭け、屋敷はとある脅迫事件の捜査に蜜柑と共に臨む。良いです、非常に良かったです。最初は抵抗のあった『オレ』という一人称での文章も、蜜柑の想い、パートナー竜人の心情を推し量り、その後迎えた切ないラストでどうしようも無く活きてくる。表題には名探偵と有るけれど、寧ろマーロウに近いと感じた傑作でした。2018/06/10
tonnura007
60
かつては難事件を次々に解決した名探偵・屋敷啓次郎。時代は変わり、隠遁生活を送る屋敷のもとに、元相棒の警察官の竜人が訪れる。世間では次世代の名探偵蜜柑花子が注目されており、竜人はそんな現代の名探偵と屋敷を対決させて屋敷を復帰させようというのである。 長編の仕様だが中身としては小事件を詰め合わせたもの。それぞれ小粒で使い古されたトリックばかりで、はっきり言って完成度が低いと言わざるを得ない。引退した名探偵が苦悩するといったシーンは斬新だが、それ以上のものはないように思う。2024/09/01
五右衛門
59
読了。初めての作家さんでした。名探偵VS新探偵という帯でしたが新旧合わせ技での事件解決かなと。解決からのどんでん返し的な内容でした。旧探偵さんが余りにも不安がったり、悲観しすぎな感じがしました。けれども解決した後の終わり方が切ないよね~。少し空けてかこの作家さんの作品行きます。2023/09/22
toshi
47
2013年の鮎川哲也賞受賞のデビュー作。36歳の屋敷啓次郎は数々の難事件を解決してきた、国民的名探偵です。しかし30年後の現在、ある理由からすっかり落ちぶれてしまい、探偵は開店休業状態に。そこで現代の名探偵、蜜柑花子と一緒になって事件に挑戦する機会を得ます。果たして屋敷探偵は無事事件を解決出来るのか?ワトスン役を配さずに、探偵の一人語りで進行する方法が新鮮でした。続編は蜜柑花子が主役のようです。2024/04/04