内容説明
十七歳の暑く単調な夏休み、広田悦至は元恋人の由実果が、千葉の海で自殺したことを知る。事件の日、渋谷からの彼女の呼び出しを断っていた悦至。渋谷にいた彼女がなぜ千葉で自殺を?再会した幼なじみの涼子とともに事件を調べ始めると、自分たちの知らなかった由実果の姿が、次第に明らかになってくる―。悲しくも、爽やかな夏の日々の描写が秀逸な、青春ミステリの傑作。
著者等紹介
樋口有介[ヒグチユウスケ]
1950年群馬県生まれ。國學院大學文学部中退後、劇団員、業界紙記者などの職業を経て、1988年『ぼくと、ぼくらの夏』でサントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビュー。1990年『風少女』で第103回直木賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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セウテス
81
高校生の広田悦至は、元恋人の宮沢由実果の自殺に疑問を持ち、幼なじみの友崎涼子と共に真相を探る。毎回書いているが、樋口氏の作風は読んでいて爽やか気持ちが良い。背景などハッキリしないのだが、登場人物は一人一人がイメージしやすいのも特徴だろう。高校生にしてはハードボイルドが過ぎる様に感じるが、気の強い女子高生との掛け合いの様な会話はけっこう楽しい。ただ私ならこのタイプの女性たちに囲まれていたら、パニックを起こして仕舞うだろう。謎解きも二段三段構えになっていて、予測になるのだが真相にたどり着いた満足感は大きい。2020/10/05
nemuro
18
たぶん、10数年ぶりの再読。すべての既読本の中で私が一番大好きな本、『彼女はたぶん魔法を使う』(樋口有介/創元推理文庫)とシチュエーションも似た感じ。これぞ樋口有介といった風で、実に良かった。(かなり強引ではあるが)これも、勝手に思い付きで始めてみた「自宅本棚の本のタイトルによる“しりとり読書”」のおかげ、と言えなくもない。で、“しりとり読書”は、『燻(くすぶ)り』から来て次は『父・藤沢周平との暮し』を選んでみた。2019/06/14
キー
13
1996年の樋口有介作品。 樋口氏のデビュー作『ぼくと、ぼくらの夏』と同様、男子高校生が夏休みの間に女子高校生の死の謎を解く、という物語。 ただ、『ぼくと、ぼくらの夏』と比べて、だいぶハードボイルド風味。新宿に近い『梅園銀座商店街』を舞台に、クールな主人公と主人公を取り巻く個性的な人々を配置。私立探偵が男子高校生に置き換えられたハードボイルド小説、という雰囲気です。 内容紹介にある「青春ミステリ」という言葉からイメージする甘酸っぱさより、だいぶ苦めの味わいでしたが、自分にはその苦さが快い読み心地でした。2019/11/26
k&j
6
Kindleでセールだったので読みました。気になってはいたけど初めて読む作家さん。んー、正直合わなかったですね。行動の描写に何か癖があってよくわからないのと、翻訳小説みたいな不自然すぎる会話に違和感があったのだけど、ファンの人にとっては逆にこれが魅力なのだろうか。ミステリーとしても弱い感じで、結局雰囲気にハマれない人にとってはダメな気がします。ただ、主人公の母親や祖父など脇役のちょっと変わったキャラ設定は割と好きでした。この作家さんは他の作品もこんな感じなのだろうか。。2017/08/07
ふぃえ
5
樋口さんお得意の、青春ミステリ。やけに冷静な高校生の主人公と、それぞれ一癖も二癖もある周辺人物たち。この、癖、が曲者で、ついつい引き込まれてしまうんだよな。2022/12/05