内容説明
僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著者デビュー作。
著者等紹介
坂木司[サカキツカサ]
1969年東京生まれ。2002年覆面作家として『青空の卵』を刊行し衝撃のデビューをかざる。以後『仔羊の巣』『動物園の鳥』を上辞し、鳥井と坂木が活躍する“ひきこもり三部作”を完結させる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
585
いまさらですが、坂木作品を初めて読みました。いいミステリというだけでなく、小説としてとてもよかった。人々の心というものが、ここまで細やかに描けて、謎をとく要素となっているのですからね。ひとつの話の登場人物が、次の話にも受けつがれて、どんどん物語が成長していくことにも驚きます。ひきこもりと言いながら、鳥井の交友はどんどん広がり、単に外に出ないだけのようにも思えてきます。作者と同じ名前の人物が、小説の語り手であることも楽しめる要素でした。2018/01/31
めろんラブ
521
その繊細さ・優しさがどこか不健全で惹かれる。目が離せない。鳥井と坂木。二人の絆は強靭なようで、その実いとも簡単に崩れ去ってしまう危うさを孕んでいる。それは、「愛ある支持者」を自認する坂木自身の精神状態も驚くほど不安定だから。育て直しが必要な鳥井を支える、つまり親的な役割を果たすには、坂木はあまりにも未熟。必要とし、される関係は、限度を超えると病的な依存をもたらす。鳥井が羽ばたく日を夢見ながら、飛び方は教えたくない・・・矛盾する思いを抱える坂木の自律と自立が、このシリーズの裏テーマになる予感。2010/10/28
エンブレムT
354
描かれているのは日常のミステリーですが、人の心を繊細に浮き彫りにしていく展開なので、読む人によって見えてくるモノが違うような気がしました。私は『世界を広げていく子供の成長物語』に近いような感覚で読了しました。・・・それにしても、何なの?この2人の、限りなく灰色な互いへの執着心は!坂木さん、これだけの筆力があれば万人に受け入れられやすい描き方も出来るだろうに、確信犯だよねぇ。チカラ技でそのイビツさを“アリ”にしちゃうとはwまぁ、その歪みこそも魅力なんですけどねー。ええ♪次も読みますとも(笑)2013/05/31
ダイ@2019.11.2~一時休止
350
ひきこもり探偵その1。デビュー作。連作短編集。安楽椅子探偵もの。事件を解決後もサブキャラとして次章以降にも登場するためどんどん登場人物が増えていく。春の子供が一番好き。2015/02/26
hiro
329
坂木さんのデビュー作だが、いつもの‘日常の謎’のためか、読み始めてすぐ坂木作品の臭いがして、たいへん読みやすかった。坂木の作品は作品間のつながりが楽しいが、デビュー作ではそれが期待できない。しかし、坂木司と鳥井真一の関係は『切れない糸』の新井和也と沢田直之の二人を、安藤淳は『和菓子のアン』のオトメン立花早太郎を、マリオは『ホリデーシリーズ』の進を、また、巣田香織のデパート勤めは、『和菓子のアン』のアンちゃんをそれぞれ思い出した。そういう意味では、後の坂木作品の卵が詰まったデビュー作だった。続編も読みます。2013/09/21