出版社内容情報
銀行に勤める瑞希は、中学三年生の冬に別れた同級生の恋人を忘れられずにいた。「フルート奏者になる」「宇宙に関わる仕事をする」夢を語り合った航空記念公園に展示されている飛行機「天馬」の前で、別れの直前に二人はある約束をする。それを支えに生きてきた瑞希だが、届いた同窓会の招待状に彼との再会を期待し思い出の公園に立ち寄ると、中学時代の記憶が鮮やかに甦る。ふたたび「天馬」の前に立ったとき、十年の空白が埋まるように“約束”のもうひとつの真実が明らかになる。(「雪には雪のなりたい白さがある」)公園を舞台に、時を超え、思いが交差する。五つの奇跡の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
168
瀬那さん3冊目。実在の公園を舞台にした5つの短編は著者らしいハートウォーミングな物語。『わたしたち、~』や『今日も君は~』ほど胸に迫る事はなかったが、心地好さは相変わらずで、主人公たちの気持ちに寄り添えた。どの話も根底に「他者への思いやり」が描かれているので、自分本位で生きている私には「少しは見習わなくては」と反省にもなった。還暦近いオジサンにとっては、若い人たちの苦悩にイライラすることもあったが、逆に微笑ましかったり、懐かしくて胸がキュンともした。そういう意味では10~20代向けの作品集かも知れない。2021/03/30
papako
80
花魁さんシリーズが楽しめたので。公園で出会う人たち、4組のお話。実在の公園が舞台でした。それぞれがいろんな悩みを抱えて生きていて、それでもひたむきに前向きに生きている人たちの決意がとても心地よかった。所沢航空公園の二人、安易に再会とならなかったのが残念だけど、だからこそ二人の未来が輝いて見えました。横浜の港の見える丘公園しか行ったことないのが残念。飯能のムーミンバレー行ってみたいけど、所沢の航空公園の方が楽しそう。2020/02/21
nemuro
63
初遭遇の作家。「雨上がりに傘を差すように」「体温計は嘘をつかない」「メタセコイヤを探してください」「雪には雪のなりたい白さがある」「あの日みた空を忘れない」の5話を収録。第5話は表題作の第4話の後日譚のようだなぁと思っていたら巻末に「文庫化にあたって新たに収録しました」とあって、やっぱり。「公園めぐりは私の趣味の一つでした。そんな大好きな場所を舞台に物語を書きたいというのが、この本が生まれたきっかけでした」との「あとがき」。ふむふむ、たしかに。こんなロマンチックな物語が創元推理文庫から出るのも悪くない。2022/04/08
えりこんぐ
61
表題作を含めた5つの短編集は、どれも公園での出来事が描かれている。家族や友人と一緒だと、楽しませなきゃ!と頑張ってしまうところもあり、1人で気ままに行く公園はいいものです。そこでしか会わない風景や人。声を掛けてもらったことも沢山あった。何気ない一言に救われた。すれ違って二度と会わない人だろうけど、何年経っても覚えていて励まされている。【積読3】2022/01/18
itoko♪
58
単行本で既読だけど、文庫には一話追加されたと知り、購入。この追加された一話がすごく良くて、じんわりと沁みます。実在する公園を舞台に様々な人間模様が。表題の『雪には雪のなりたい白さがある』という言葉が深いんです。装画は、単行本と同じくイラストレーターのげみさん。どちらの装画も素敵なんですよ。2018/01/25