出版社内容情報
異色の名探偵・幽霊紳士が謎を解く『幽霊紳士』。ホームズ・パスティーシュなどを含む『異常物語』。時代小説の大家による,本格ミステリと奇想に満ちた幻の短篇集の合本版。
内容説明
全身をグレイ一色につつんだ異色の名探偵・幽霊紳士が事件関係者の前に現われた時、謎は解き明かされる―どんでん返しの趣向に満ちた全12話で構成される『幽霊紳士』。若き日のホームズの活躍を描くパスティーシュなど、世界を舞台にした奇妙な8編を収録する『異常物語』。時代小説の大家による、本格ミステリ連作集と長らく入手不可能だった奇想に満ちた短編集を合本で贈る。
著者等紹介
柴田錬三郎[シバタレンザブロウ]
1917年岡山県生まれ。慶應義塾大学卒。在学中『三田文学』に「十円紙幣」を発表。戦後、編集者生活を経て、51年『イエスの裔』で第26回直木賞を受賞。“眠狂四郎シリーズ”は一大ブームとなった。1978年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くさてる
28
わあ、これどういう話なんだ。殺人事件が一応の解決をみた……あとに「仕損じたね」と現れる灰色づくめの幽霊紳士。ミステリなのは間違いないけど、どこか奇妙な味。でもドラマの味つけはあくまで昭和の世相風俗にのっとった人間臭いものなので、それらがぜんぶ混ぜ合わされて令和に読むと、とても奇妙で不思議な話に思えます。面白かった。2021/10/23
geshi
23
かの柴田錬三郎がミステリーを書いていたとは、という驚きで手に取ったが、内容もなかなかに良質。エロティシズムのある内容に旧来の道徳観がなくなった1960年という時代を感じざるを得ないが、先入観をひっくり返す手腕はさすが。メフィストフェレスめいた名探偵が真実を告げる者として出てきて話を急転直下させる、少し反則っぽい切れ味。『異常物語』はホームズパスティーシュありヒッチコックありのバリエーションが面白い。オチが似たような話が多いのは気になったけど。2014/11/20
ken_sakura
21
普通。カッコ良い。事件が解決した。謀り事が上手くいった。その時、「・・・仕損じたね」と全身を灰色に装った幽霊紳士が現れる♪( ´θ`)ノ漫画「哭きの竜」の「背中が煤けてるぜ」を思い出した。読者として多くの物語を読んだであろう著者の、通の見識のようなものを感じる吟味と趣向を、もの知らぬなりに楽しく読んだ(^_^)幽霊紳士連作短編12編。「女子学生が賭をした」が好き。居酒屋でちょっと気持ち良く著者の語りを聞いているような異常物語8編。「生きていた独裁者」が良かった。計20編。2018/03/03
ひなきち
21
柴錬のミステリ、面白かった〜(^^)「…仕損じたね」という決めセリフと共に現れる『幽霊紳士』。読者をミスリードしつつ、あとから別の角度で真相が解き明かされる手法で、なおかつ私の好きな連作短編!気にいりました。『異常物語』も風変わりでしたが、最後があやふやな感じ…だったかも。とにかくエロをエンタメに変えるのがすごく上手です(笑)これからも少しずつ柴練作品を読み進めていきたい。2016/04/29
Kouro-hou
21
連作短篇集「幽霊紳士」「異常物語」二本立て。「幽霊紳士」は事件解決!となった所でいきなりヤッチマッタナーと言って現れる灰色のダンディ。探偵役の思い込みや盲点を指摘して結末をひっくり返して消える超常的存在である。それは後出し…と思うこともありますが中身は本格推理仕様。登場人物や関係者が次篇の主役になるのが特長。完全犯罪を仕組んでヤッチマッタナーされたりする事も。殺し屋の流儀の解説に眠狂四郎を使ったりする辺りが柴錬ファンにはニヤリ。この本が評価されれば柴錬の本格推理モノがもっと出るかも、と煽り気味解説も良い。2015/01/06