出版社内容情報
昆虫オタクのとぼけた青年・エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。昆虫目当てに各地に現れる飄々(ひようひよう)とした彼はなぜか、昆虫だけでなく不可思議な事件に遭遇してしまう。奇妙な来訪者があった夜の公園で起きた変死事件や、〈ナナフシ〉というバーの常連客を襲った悲劇の謎を、ブラウン神父や亜愛一郎(ああいいちろう)に続く、令和の“とぼけた切れ者”名探偵が鮮やかに解き明かす。第10回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む連作集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
201
「ブラウン神父」の作風が現代によみがえったような作品。そうとしか思えないのは、ラストの、牧師さんの死の真相を解き明かした短編の影響かも。昆虫がからんだ謎ということで、過去に読んだミステリの例も思い出したが、昆虫はあくまで探偵の趣味に抑えている。事件の背景がよく考えてあるのも、単なるバズラーにとどまらず、小説的におもしろい。魞沢泉青年が酒に弱そうなのに、呑んでしまうキャラなのがおもしろい。続編はまだ本としてまとめられていないらしいが、ぜひ読んでみたいと思う。文庫オリジナルで出してもらえると、ありがたい!2021/02/13
みっちゃん
170
「とぼけた切れ者」昆虫オタクの名探偵登場。虫を求めて訪れる場所という場所で必ず不可思議な事件に遭遇。出会う人達と交わす会話の珍妙なこと。全く噛み合わずどんどんずれていくやり取りに思わず脱力、油断していてはいけない!その恐るべき観察眼と洞察力で事件を解決。一番驚かされ、あんぐり開いた口がずっと閉じなかったのが「ナナフシの夜」ナナフシはとあるバー。行きずりに出会った夫婦の微笑ましい痴話喧嘩の果てに…が!全く想定外の結末に驚愕。確かに伏線、あったわ。やられた!この少ない頁に凝縮された秀逸ミステリー、お見事です。2021/02/15
stobe1904
136
【昆虫好き探偵の連作ミステリ】先に『蝉かえる』を読んでいたが、とても気に入ったので本書を手に取る。ミステリの短編5篇で構成され、どの作品もレベルが高いが、中でも『火事と標本』が秀逸。亜愛一郎の系譜を彷彿させる、ちょっとズレた、とぼけた味と叙情性がうまく噛み合った連作集でミステリとしての切れ味も抜群。あとがきの泡坂妻夫氏とのエピソードに心があたたまる。新作が待ち遠しい。★★★★☆2024/01/27
五右衛門
129
読了。結構好きです。この感じ。初めての作家さんでしたがハマりました。謎解きも切れてました。個人的には母と子の物語が寂しく感じながらもゾクっとさせられました。短編各終盤も無理なく解決しており、今後追いかける作家さんがまた増えました。次の作品は長編なのかな?楽しみです。 2023/08/20
Nao Funasoko
121
ちょっととぼけた昆虫オタの探偵が活躍する連作短編集。 久しぶりに普段好んでは読まない「人が死ぬ」ミステリを読んだが、主人公のキャラと軽妙な筆致で重くも醜くもならず読み進められた。 かといって軽いかといえばそうでもなく、謎解きも背景の因果関係もしっかりしており満足する読後感だった。 とくに「ナナフシの夜」「火事と標本」は好みだし、一話目と最終話がリンクしてる構成も巧い。2022/07/04