出版社内容情報
昆虫オタクのとぼけた青年・エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。昆虫目当てに各地に現れる飄々(ひようひよう)とした彼はなぜか、昆虫だけでなく不可思議な事件に遭遇してしまう。奇妙な来訪者があった夜の公園で起きた変死事件や、〈ナナフシ〉というバーの常連客を襲った悲劇の謎を、ブラウン神父や亜愛一郎(ああいいちろう)に続く、令和の“とぼけた切れ者”名探偵が鮮やかに解き明かす。第10回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む連作集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
168
「とぼけた切れ者」昆虫オタクの名探偵登場。虫を求めて訪れる場所という場所で必ず不可思議な事件に遭遇。出会う人達と交わす会話の珍妙なこと。全く噛み合わずどんどんずれていくやり取りに思わず脱力、油断していてはいけない!その恐るべき観察眼と洞察力で事件を解決。一番驚かされ、あんぐり開いた口がずっと閉じなかったのが「ナナフシの夜」ナナフシはとあるバー。行きずりに出会った夫婦の微笑ましい痴話喧嘩の果てに…が!全く想定外の結末に驚愕。確かに伏線、あったわ。やられた!この少ない頁に凝縮された秀逸ミステリー、お見事です。2021/02/15
へくとぱすかる
164
「ブラウン神父」の作風が現代によみがえったような作品。そうとしか思えないのは、ラストの、牧師さんの死の真相を解き明かした短編の影響かも。昆虫がからんだ謎ということで、過去に読んだミステリの例も思い出したが、昆虫はあくまで探偵の趣味に抑えている。事件の背景がよく考えてあるのも、単なるバズラーにとどまらず、小説的におもしろい。魞沢泉青年が酒に弱そうなのに、呑んでしまうキャラなのがおもしろい。続編はまだ本としてまとめられていないらしいが、ぜひ読んでみたいと思う。文庫オリジナルで出してもらえると、ありがたい!2021/02/13
ナルピーチ
137
彼が行く先々で事件に遭遇してしまい、真相を解明してしまう昆虫大好き青年“ 魞沢泉”を主人公に描いた短編集。昆虫の生態を上手く活かした一風変わったミステリー。事件は殺人事件ばかりで深刻なはずなのに魞沢の緩い空気感のおかげでコミカルに読めてしまう。お勧めは「ナナフシの夜」魞沢が立ち寄ったバーを舞台に常連客の言動からその関係性を推測。翌未明に起こる殺人事件の要因を優れた洞察力で容易く見抜いてしまう。色盲の特性やナナフシの擬態など伏線もお見事だった。次作ではどんな昆虫?!がミステリーに変貌するのか。続編も楽しみ!2024/02/21
五右衛門
125
読了。結構好きです。この感じ。初めての作家さんでしたがハマりました。謎解きも切れてました。個人的には母と子の物語が寂しく感じながらもゾクっとさせられました。短編各終盤も無理なく解決しており、今後追いかける作家さんがまた増えました。次の作品は長編なのかな?楽しみです。 2023/08/20
タイ子
119
初読み作家さん。昆虫を愛してやまない男性、名前を魞沢泉(えりさわ せん)と言う。彼の登場する所、いや彼が訪れる所に殺人事件多し。自分からしゃしゃり出て事件の謎を解くなどの図々しい根性は全くない。だけど、何故か気が付けば飄々としながら真実を見抜いている。そして、伏線の張り方が上手い。短編なので最初から何気に読んでしまう部分にしっかり伏線が張られている。5つの短編集、どれも面白い。特に「火事と標本」が良かった!悲しくも切なく人間の業というより情が胸に響く作品。また新しいミステリー作家に出会った。2021/01/26