出版社内容情報
団地に住む小学生が失踪しては数日で戻ってくる事件が立て続けに発生している。ついては解明に力を借りたい――そんな匿名の情報提供を受けたゴシップ誌の若手編集者・猿渡は、フリー記者の佐々木とともに城野原団地で取材を開始した。状況から子供たちの意図的な計画であることは明らかだったが、猿渡らがその真意をつかめぬうちに、別の子供が授業中の視聴覚室から姿を消してしまう。子供たちはなぜ順番に失踪しているのか? 俊英による傑作長編、待望の文庫化。
内容説明
同じ団地に住む小学四年生が失踪しては数日で戻ってくる出来事が連続して発生した。広義の密室だった団地、教師に見張られた視聴覚室などの不可能状況下から、忽然と姿を消す子供たち。当初はいたずらか家出と思われた事件は、やがて地域住民を巻き込んだ大騒動に発展する。子供たちはどのように、そしてそもそもなぜ失踪を続けるのか。切実なる一夏の闘いを描いた傑作ミステリ。
著者等紹介
岡崎琢磨[オカザキタクマ]
1986年福岡県生まれ、京都大学法学部卒。2012年、第10回『このミステリーがすごい!』大賞“隠し玉”作品に選出された『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
67
小学生の子どもたちと、雑誌記者との知恵比べの駆け引きが、どこまで続くのか、実は心の中では子どもたちを応援しながら読んでいた。読み終わったときの爽やかさは、ミステリとしては珍しい部類になるだろう。しかしこれは児童書ではない。大人にこそ読んで問題を知ってほしい小説だと思う。解説の辻真先さんが、読んでいる途中の印象を書いておられ、それが自分とほぼ同じだったので、読者仲間に入れていただいたような思いがした。最初に読んだのは図書館の単行本で、印象は残っていたものの、展開を忘れていて、十分に楽しむことができました。2023/06/06
オーウェン
62
城野原小学校4年1組の間で起きた失踪事件。 たった1日のはずが、2人目は4日間。 事件に興味を持つ佐々木と猿渡は取材のため関係者に聞き込みを始める。 次第に分かってくるが、この失踪は子供たちが仕組んだ意図的なもの。 そこに大人が謎を解こうとする構図。 つまりは知恵比べである。 もちろん意図的な失踪には意味があるのだが、それを子供たちが考え付いたところに意味がある。 真相がわかるときに小さな感動が浮かび上がってくる。 この佐々木と猿渡のコンビは違う事件でも見たいかも。2022/03/07
さとか
51
時は1996年夏。周辺から隔離された巨大団地の中で、小学生が立て続けに失踪しては数日で戻ってくる事件が発生する。ゴシップ誌の編集者をする主人公は、現場で取材を開始するが、はじめはいたずらかと思われた事件は、やがて団地内外の住民を巻き込んだ騒動へと発展する…。団地ならではの排他的思考、片親世帯の子供との関わり合いなど、考えさせられるテーマが多く、それなりに楽しめました😊時代を一昔前に設定したのは、携帯電話があってはトリックが成立しないから。もう少し当時の雰囲気が味わえる記述があってもよかったかも。。。2021/08/12
うまる
41
序盤は倒叙ミステリ+小学生との知恵比べという感じですが、そのゆるっとした感じにダマされてはいけません。物語は小学生の連続失踪事件からは想像できない方向に進みます。各々の立場の心情が深く考察できるミステリで、ミステリ・フロンティア100冊記念にふさわしい読ませる話だと思いました。とはいえ、最初の謎でこんなもんかと思ってしまったのも事実。これは始まりに過ぎないので、そこで読むのをやめないでほしいです。真実が明かされてもやりきれない思いもありますが、エピローグが良い感じにまとまっているので読後感は悪くないです。2021/07/10
織葉
31
作者さん初読。読みながら展開がやけに早いくせにやけに分厚い本だなと感じた。確かにすっきりする読了後だが、ミステリーとしてはそこまでどんでん返しは感じず。殺人系のミステリーとはまた違う間隔を味わえた。夏休みを取り戻すべく反抗を始めた、中学受験を控える小学4年生たち。子供だって必死だ。それぞれが色々な思いを抱えながら、一生懸命に事件を起こす。また、“夏休みを取り戻す”という計画に隠された別の思いも見逃せない。興味深いミステリーだったが、小学生が考えたものだと思うと確かにしっくりくる。夏の終わりに読むのもあり!2021/07/27
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