内容説明
就職しアパートで一人暮らしを始めた清水真弓は、絶えず隣家からの視線に晒されている感じに悩まされる。そう、隣に住むアルコール中毒の翻訳家大沢芳男がこっそりと屋根裏部屋から覗いていたのだ。一度は断った酒を再び口にした時、大沢の内で何かが蠢き出す。やがて二人を巻き込んで恐ろしい事件が起こり始めた。悪夢の果てに待ち受けているものは…。折原一の長編第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あっ!chan
42
読み友さんのレビューを読んで、折原作品に初挑戦です。おすすめは「覆面作家」でしたが、この作品もどうしてどうして…登場人物達がみんなネジが飛んでいて、凄く不気味で緊張感いっぱいの面白い出来でした。アル中の翻訳家から覗かれる旅行会社の新人OL、さらにアル中の窃盗犯が加わり、被害妄想と不倫と通り魔事件が絡み合い物語が進み、最後に十重二十重に張り巡られた伏線が、五転六転して明らかになる…ちょっとふに落ちないところもあったけど、今まで読んだことのないテイストで大満足でした。ちょっと追っかけてみようかな…2020/03/31
90ac
41
読み終わってカラクリが分かると、腑に落ちない点が二、三出てくる。読み込みが足りないのかもしれない。翻訳家にしても窃盗犯にしても笑いが出るくらいおかしな奴たちだ。ラスト近く、母親の娘に対する思いが伝わりジーンときてたら、とんでもなかった。ネタバレになりそうなのであまり書けない。2016/08/24
おうつき
31
未読だと思っていたが、途中で読んだことのある作品だと気付いた。初めて読んだ時の記憶があまりなかったのは、同著者の作家を主人公にしたシリーズと混同していた事と、過剰なまでに重なっていくどんでん返しが逆にインパクトが弱くなっていたのかも知れない。改めて読み返した所、初めて読んだ時よりも楽しめた。釈然としない部分はいくつかあるものの、デビュー作としての熱量が溢れ出ているエンタメとしてはレベルの高い作品だと思う。2020/01/15
とも
31
★★★★叙述トリックがふんだんに取り入れられた倒錯シリーズ第二弾。引き籠もりででアル中病院から退院した翻訳家の大沢芳男、その向かいのアパート201号室に移り住んできた田舎から上京したての清水真弓。この覗きの男と覗かれる女、2人を中心に発生する、拉致、殺人、不倫、通り魔、空き巣など、犯罪のオンパレード。そのどこに作家のトリックが関わっているのか。まさに倒錯の世界である。2018/06/17
mhsr
13
著者の長編第一作。著者のトリックの傾向は聞いて知っていたものの見破れず。後半の怒涛の展開は必見。デビュー作でこの完成度とは恐れ入る。文句なしの面白さだった。2017/07/10