内容説明
学長の私的なコレクションを収めた第三閲覧室で死体が発見される。事件の背景にあるのは大学内の複雑な人間関係か、それとも膨大な数の稀覯本か?図書館運営主任が疑われるなか、彼の無実を確信する古書店主が事件の調査に乗り出す。現場周辺で目撃された謎の女性、奇妙なダイイング・メッセージなど、事件には不可解な点が散見され…紀田ミステリを代表する長編本格推理。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
99
密室殺人、ダイイング・メッセージが盛り込まれながらガチガチの本格ではなく、登場人物たちのディテールの方が実に濃密で面白い。ある種伝記を読んでいるかのようだ。紀田氏のビブリオミステリはミステリ読み、書物購入者として自分が普通であることを再認識させられるという意味でも良著だ。本に魅せられ本に淫した人々のディープな世界を見ることはしかしなんと面白い事か。どんな世界でも人を狂わせる魔力はあろうが、書物は派手さがないだけに闇の如き深さがあるように思える。私も本書に描かれた人々のような闇に囚われないよう気を付けねば。2018/01/28
めぐみ
5
旅のお供に。トリックと謎解きについては、そこまでのものではない。図書館の壮麗な描写に、本好きとしては、私設図書館への夢を掻き立てられる。2016/09/03
夜梨@灯れ松明の火
3
門井慶喜『おさがしの本は』からの流れで、図書館関連の本を手当たり次第に。内容や表紙から、何となく大昔のミステリーだと思っていましたが、単行本が出版されてから、15年ほどしか経っていないのですね。(私には)読みにくい文体に加えて、更に本を印刷する際の紙やインキの事、図書館を燻蒸する方法など、専門的な語彙も多く、読むのにちょっと苦労しました。トリック?は途中で想像したとおりでしたが、犯人は最後までわからず、面白く読めました。何冊か読んでみたいと思います。2012/04/05
只今小説熟読中
2
痒いけれどギリギリ手が届かなくてもどかしくも、ある種それが心地良かったです。 本、人間関係、殺人が上手く絡み合って織りなす展開が面白く、本好きには堪らなかったです。張り巡らされた仕掛けには最後になって気づかされ、それもまた快感でした。2018/12/01
ふみえ
2
殺人が起こるまでの布石で、「何が何なのか?」。ページを後戻りしながら読了。古書のアレコレや、探偵物としても充分楽しめました。ただ、殺人に関しては、動機等曖昧な感じがして、"それでなんで殺されたの?"でしたが…。再読しないとダメかな。2012/09/23