内容説明
フォークソング歌手緒方信大が殺害死体となって鎌倉で発見されたのは、暮れも押し詰まった日だった。クリスマスイヴの日、歌手が密かに借りているアパートから大きな袋を背負って出てきたサンタクロースを見た人がいる。当局が調べてみると、同日隣町の商店街で三人の女子大生がアルバイトでサンタの扮装をしており、容疑がかけられるが、うち二人は同時刻に商店主と言葉を交わしていてアリバイが成立する。ところが三人とも同じ主張をし同じ化粧をしていたので、商店主も人物を特定できず捜査は難航する。構想二十年に亘る謎と論理の本格推理雄篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
82
〔再読〕本作もアリバイ崩しではあるのだが、確固たるではなく「2/3のアリバイ」という、特質なトリック論が魅力的な作品です。クリスマスイブの昼間、一人の男が殺害されるのだが、サンタの仮装をした化粧の濃い女性と容疑者は浮かぶ。しかしバイトでサンタの仮装をしていた女性は現場に3人おり、3人とも同じアリバイを主張する。更に証人は、3人の内の2人のアリバイが在る事を証言するが、どの女性であるかを特定出来ないという状態。2/3のアリバイを論理的に紐解いていく、緻密かつ重層的な推理が独創的で、私的には隠れた名作である。2021/02/17
やまだん
7
ミッシングリングとアリバイ崩しをテーマとした本格ミステリ。いわゆる「名探偵」は出てこない。神奈川県警と警視庁が,二つの殺人事件の捜査を行う。サンタクロースの衣装と厚化粧により,3人のうち誰かは分からないが,そのうち2人にはアリバイがある…といった魅力的な謎が提示されているのだが,解明するプロセスの描写が,まるで捜査記録を読んでいると錯覚してしまうほど地味に描かれている。ベースとなる謎,ロジック,プロットは秀逸なのに,その見せ方があまりに下手で,地味な印象しか残らなかった。正直,退屈な作品だった(35点)。2016/02/27
schizophonic
2
刑事たちの捜査を丹念に描き、崩しても崩しても立ちはだかるアリバイの謎をとことんロジカルに追求していく緻密な作風、内外のミステリを元にした章題でのおあそび。鮎川哲也の作品を彷彿とさせるが、完全アリバイならぬ2/3アリバイという独創的な発想によって、鮎川哲也の最良の長編にも匹敵する知的興奮に溢れた作品である。2011/12/18
Tetchy
2
印象は地味ながらも忘れられない味わいがあり、なんだか人に紹介したくなる魅力を備えている。本書の目玉は冒頭の3人のサンタクロースの内、1人が殺人を行っていることが明白にも拘らず、それが3人の内、誰かわからない、「2/3アリバイ」論にある。こういう地味ながらも無視できない魅力的な設定を軸に更に第2の殺人が、しかも同様のシチュエーションで起こる。しかしこれこそが作者の仕掛けたレッド・ヘリングで、一見立証不可能に見えた犯罪が最後見事に真相へと結実するロジックの妙は実に味わい深い。2009/06/17
しい太
1
容疑者のアリバイ崩しと動機の追究にひたすら文字を費やした超ソリッドな本格推理小説。幻想的な謎で牽引するタイプじゃなくあくまで捜査の足と緻密なロジックを積み上げる系統なので、地味だが保証された面白さがある。各章のタイトルが古今東西有名ミステリのタイトルをいじったり丸ごと使ったりしており(本書の表題も「幽霊の2/3」から取ってるぽい)、地味だがミステリ愛に溢れてるなーと思うなど。クロフツとかクイーンとか、あんまり得意じゃないんで地味としか言えないが……。2021/04/25




