内容説明
密室状態での恋人の死に始まり、その調査を依頼した素人探偵まで、衆人環視のもとで殺された蓑浦は、彼に不思議な友情を捧げる親友諸戸とともに、事件の真相を追って南紀の孤島へ向かうことになった。だが、そこで2人を待っていたのは、言語に絶する地獄図の世界であった…!『パノラマ島奇談』や『陰獣』と並ぶ、江戸川乱歩の長編代表作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
378
前半は密室ミステリー。後半は冒険活劇。昨今のミステリーは探偵役のキャラクターが英雄視されるが、本作では物語の中盤辺りで探偵役が(謎解きをする前に!)アッサリ死んでしまうため、影が薄いのだが、かえって新鮮に感じられる。男色による耽美的な要素と、身体・精神障碍者を扱ったテーマであるゆえに、ドロッとした粘っこい雰囲気が全体を包み込むのだが、主人公の手記という体裁をとっている文章はむしろ簡素でサラリと読みやすい。当時の挿絵もおもしろいが、頭に思い描いていたのとぜんぜん違うのもあったから、いらなかったかもしれない。2017/11/13
Kircheis
199
★★★★☆ 乱歩の代表作。 おどろおどろしい雰囲気が全編に漂う。 ミステリというより、ホラーサスペンスという感じ。 ちなみにBL要素有り。 ボスのはずの孤島の鬼が思った以上にザコなのが少し残念。2020/03/17
ehirano1
169
ノンストップの壮大且つ斜め上の面白さでした。読んでる先からネタバレが記載されているのですが、それでも面白いです(=ネタバレは主題ではないということでしょうね)。おそらくミステリーではあるけれどヒューマニズムに重きを置いたのではないかと思いました。2023/01/04
🐾Yoko Omoto🐾
156
再読。この超絶に怪奇的な世界観、後半の臨場感溢れるサスペンスフルな展開は言わずもがな、今の時代の常識ではおよそ想像のつかない真相も推理小説としての完成度が高く、乱歩の長編の中で傑作の部類に入ること間違いなしの作品。現在では確実に不適切とされる内容や表現・用語が多用されているが、その部分なくしてこの作品は成立せず、いみじくもこの作品の魅力を決定付けていると言っても過言ではない。今回の再読ではラストの一文に強く心打たれた。おどろおどろしく禍々しい物語の中で、根底にあったのは諸戸道雄の純愛ストーリーなのだと…。2014/11/06
Tetchy
154
乱歩作品マイベスト。中学生の頃、図書館にあったポプラ社版の江戸川乱歩シリーズを全て読破していたので、大学生の時にこの文庫に出会って、まだ読んでない本、あったんだと思い、手にしたら、これが傑作!冒頭の白髪の男性と大きな奇妙な痣のある女性の顛末が語られる。海水浴場での衆人環視の中の殺人から終盤の洞窟内での一進一退の攻防など、全編通俗趣味なのになんでこんなに面白いんだろうと思ったもんだ。特にあのかわいそうな姉妹は乱歩作品の中でも屈指のキャラクターだろう。あ~、また読みたくなった!2009/07/22