内容説明
発端に提出される謎の見事さもさることながら、解明の鮮やかさが印象的な『顎十郎捕物帳』と『平賀源内捕物帳』の二つの捕物帳は、久生十蘭の作品中、もっとも本格探偵小説の醍醐味を味わうことのできる傑作シリーズである。本巻には『顎十郎』の全24編と、『平賀源内』の代表作3編を収録した。同時に、名作「湖畔」「ハムレット」等も併載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
113
直木賞作品を読もうと思って、図書館で借りてきた。読めども、読めども、直木賞作品が入っていない。借りるときに検索間違えしたことに気が付く。後の祭り。面白かったからよかった。2014/09/08
sin
36
この一冊は『久生十蘭集』と謳ってあるがボリュームと内容からいって“顎十郎捕物帳”と云いきっても過言ではない。一見、端折り方にそっけなさを感じさすもののそれは短編としての完成度が見事な余り、余計な言葉が綴られていないからでなかなかの江戸捕物帳を楽しませてもらえた。数は少なく掌編ではあるがその他収録された現代ものの短編もなかなかの余韻を残す作品ですごみがある。難をいえば“平賀源内捕物帳”ほかごとで目にすればよくできた作品であろうが顎十郎の奇天烈な個性に触れた後ではなんとも精彩を欠くように思えてならなかった。2014/11/17
Ribes triste
9
読むのは何度目になるだろう。今だに久生十蘭が好きです。初めて読む人にも楽しい名作ぞろいの本です。2016/05/08
かみしの
7
日本探偵小説全集の中の一冊。本書には「昆虫図」「水草」などの掌編から「ハムレット」「湖畔」などの短編まで、これでもかという程詰め込まれています。中でも「顎十郎捕物帳」は25話全て収録というお得感溢れる内容。この顎十郎シリーズは1話あたり約30ページで構成されているのですが、その短さにもかかわらず伏線あり、本格推理ありでかなり楽しむことができます。キャラも立っており、ライバル同心の藤波はいい性格しています。巧みなストーリー力に加え、十蘭は文章がとても上手いので、ページをめくる手がとまりません。か2012/02/04
訪問者
5
顎十郎捕物帳が兎にも角にも大傑作。あらゆる捕物帳の中でも最高峰。三題噺が奇跡のようにまとまる「都鳥」、どんでん返しに次ぐどんでん返しの「三人目」、捕物の御前試合という前代未聞の趣向で驚かされる「丹頂の鶴」など傑作ぞろい。物語後半にいたり北町奉行所の捕物名人から駕籠屋になった後の「金鵬釵」、「小鰭の鮨」も素晴らしい。2020/09/09