出版社内容情報
江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』収録作品よりあと、1950年代以降の短編ミステリの進化と豊饒を味わえる第4巻には、迫真の警察小説、珠玉のアイデアストーリー、隣接ジャンル〈幻想と怪奇〉の逸品、そして本アンソロジー初となる本邦初訳作品を含むアメリカ探偵作家クラブ(MWA)短編賞受賞作など、全13編の傑作を収録。巻末評論では、編者小森収がそれぞれのジャンルで代表的な作家を取り上げて詳細な分析を試みる。
内容説明
第4巻には本邦初紹介のブラウンリッグ「服従」などアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞受賞作3編を含む、大家から知られざる小説巧者まで多士済々の全13編を収録。評論では1950年代以降の米国ミステリ界の変化を丹念に追い、MWA賞受賞作が短編小説の最先端だった時期に到るまでを分析、さらに隣接ジャンル“幻想と怪奇”で育った作家がミステリに与えた影響も考察する。
著者等紹介
小森収[コモリオサム]
1958年福岡県生まれ。大阪大学人間科学部卒業。編集者、評論家、作家。著書・編書に『はじめて話すけど…』『本の窓から』『ミステリよりおもしろいベスト・ミステリ論18』等がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
116
13篇の短編が収められています。そのうちの3編はどちらかというとファンタジーあるいは怪奇などの分野に入ると思います。そのうちのブラッドベリの「戦争ごっこ」はかなり有名で私も読んでいたのですが、ブラッドベリらしさがあまり感じられません。編者はかなり買っているようですが。それんしても約半分が編者の評論とは?参考になるのですがもう少し短くてもという気がいつもしています。2021/02/10
みつ
40
この巻では「ミステリ」の定義を相当広げても、それに当たるか疑問符のつく作品もいくつか。「現代アメリカ文学」で括った方がいい作品もあるが、これが結構難解。最後のブラウン作品は編者も真に読めたかわからないと言うし、ジャクスン作品は実質的に解説なし。マシスン作品は、映画化もされたあの甘い『ある日、どこかで』とは異質の呪われた世界。ブラッドベリ作品はWW2のさ中に書かれた、実際の戦争(北アフリカ戦線)を幻想化したもの。マッギヴァーン作品は悪党を追走する警察小説。スレッサー作品は元警部の執念が苦い結末に結びつく。2024/07/03
geshi
34
ミステリが謎解きから幻想やサスペンス果てはホラーまで意味が拡散してしまって、自分には合わない作品が多かった。『高速道路の殺人者』警察視点と犯人視点とが交差するから緊張のハラハラ感が強調される。『戦争ごっこ』ブラッドベリの抒情的な文章と戦争の殺伐とした空気とのミスマッチが生む独特な雰囲気。『正義の人』正義を遂行する退職刑事の執着が巧みに繋がるオチ。『獲物』まんまチャイルド・プレイなホラーじゃないか!『その向こうは――闇』ミス・フォックスの他者を人とも思わぬ独善がよく出ている再会のシーンが白眉。2021/09/17
本木英朗
30
4巻も米国ミステリ会の変化が追える。ロバート・ターナー、ヘンリイ・スレッサー、ジャック・リッチー、リチャード・マシスン、シャリーイ・マシスンなどの作家名が出ていて、本当に面白い。しかもSFからレイ・ブラッドベリ、ホラーからオーガスト・ダーレスも出てくる始末だ。いやー、よかったねえ。さらにこの巻でも小森収先生による分析があって、こちらも満足だ。……というわけで次はいよいよ5巻だねえ。ではでは、また。2021/05/23
歩月るな
29
近接ジャンルを追う、この流れはアーカムハウス、ウィアードテイルズが絡み集中レイ・ブラッドベリ、オーガスト・ダーレス、リチャード・マシスン、シャーリイ・ジャクスンと向こう側あっち側(むしろ、こちら側)の大家が並ぶ。さすがに怪奇SFジャンルは畑違いという事もあり、それはどうかな、と首を傾げたくなるような、批評、読み込みの態度に多少、違いが出ている。中学の初読時の感想とか(当然感想の域を出ない)エッセイだったらありかもだけど論文なら0点つくでしょう、面白いから良いが。この年代だと、英国勢はまだナリを潜めている。2022/10/03