内容説明
ある日突然、人間を攻撃しはじめた鳥の群れ。彼らに何が起こったのか?ヒッチコックの映画で有名な表題作をはじめ、恐ろしくも哀切なラヴ・ストーリー「恋人」、奇妙な味わいをもつ怪談「林檎の木」、出産を目前にしながら自殺した女性の心の謎を探偵が追う「動機」など、物語の醍醐味溢れる傑作八編を収録。『レベッカ』と並び代表作と称されるデュ・モーリアの短編集、初の完訳。
著者等紹介
務台夏子[ムタイナツコ]
英米文学翻訳家。訳書にクォートン「牧羊犬シェップ、がんばる。」、チェーホフ他「あの犬この犬そんな犬」、オコンネル「クリスマスに少女は還る」、アンブローズ「覚醒するアダム」、フレンチ「記憶の家で眠る少女」などがある
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
95
「レベッカ」で有名な女性作家の短編集。これが素晴らしかったです。多彩な素晴らしい作品が揃っていました。ふしぎだったり、こわかったりするのですが、何よりその物語の登場人物の実在性を感じられました。表題作はヒッチコックの映画で有名だけど、小説も傑作です。でも、さらに凄みを感じる作品がいくつも収録されています!2019/11/02
(C17H26O4)
91
よくないことが起こると分かっていながら読み進める静かなどきどき。途中で感じるささやかな違和感がまた。何が起きるかも、何が起こったかもはっきりとは書かれてはいない。ただ想像させる。それでいて読み手の期待を裏切らず、ラストに必ずああっ!とか、おおっ!となる。例えば、タバコの最後の一本で。どのストーリーも読んだそばから再読した。結末を知ってから再び読む導入部の味わい深さといったら。デュ・モーリア、たまらん。2020/10/17
Panzer Leader
80
ヒッチコックの映画「レベッカ」「鳥」は観たことはあるが、初読みのデュ・モーリア。何気ない日常の描写から徐々に恐怖に包み込まれいていく不条理さを描く(鳥、林檎の木、裂けた時間)、神秘なる山の神々しさに囚われていく男女の物語(モンテ・ヴェリタ)、謎の自殺の真相を追う探偵が見つけた真実とは(動機)、切ない恋物語と思いきや驚愕のラストが待っている(恋人)など傑作集と謳うだけあって全ての短中編が素晴らしい。2017/07/04
ばりぼー
57
原題は「KISS ME AGAIN, STRANGER」(邦題「恋人」)ですが、やはりヒッチコック映画で一躍有名になった「THE BIRDS」が目玉でしょう。突然鳥の大群に襲われるというメイン・アイディアが共通しているだけで、人物設定もストーリーも映画版とは全く別物。鳥に襲撃された一家が怯えながら救助を待つ、期待と不安に揺れる心理の襞が丁寧に綴られる小説の凄みといったら…。その他、幸せの絶頂だった女性の自殺の真相が徐々に炙り出されていくラストの「動機」も、洗練されたミステリーとして文句なしの傑作です。2017/01/13
紫羊
56
収録された8編すべて、その作品世界にぐっと引き込まれた。「鳥」「モンテ・ヴェリダ」「林檎の木」「裂けた時間」「動機」はそれぞれの物語の持つ空気感がリアル過ぎて、読み終える度に、唐突に夢から醒めたような気分を味わった。2017/05/04