内容説明
遺産を相続し、不慮の事故から回復したのを契機に、職を辞して亡母の故郷クリアウォーターへと移住したハリー・ディーン。人妻となった想い人と再会し、新生活を始めた彼の身辺で、異変が続発する。消えた運転免許証、差出人不明の手紙、謎の徘徊者…そしてついには、痛ましい事件が―。この町で、何が起きているのか?マクロイが持てる技巧を総動員して著した、珠玉の逸品。
著者等紹介
務台夏子[ムタイナツコ]
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
123
初マクロイ。冒頭からの霞がかかったような雰囲気。曖昧な記憶。読んでいるうちにどうなるかどんどん不安になる。周りはみんな妖しく、息苦しい閉塞感。そして驚愕する。これ以上書くと、どうしても内容に触れてしまうけれど…アクションがなくても手に汗握る感じがミステリ好きにはおすすめ。主人公のハリーが心理学者であることに終盤で気付いた。なんて皮肉だろう。2017/03/19
みっぴー
59
素晴らしい。ミステリ、サスペンス、ホラー…全ての要素を兼ね備えた極上の作品。メイントリックはすぐ分かるけど、それとは別の衝撃的な一発を、見事に食らいました。多額の遺産を相続した主人公の身の回りで起きる不可解な事件。ヘレン・マクロイという作家の特徴を知る読者は、すぐにピンとくるはずです。そんな読者心を見透かしているかのように、絶妙なタイミングで投下される爆弾。砕けて散って、本望。2017/02/19
藤月はな(灯れ松明の火)
43
脳震盪後の記憶の欠落、老けたといって鏡を避ける傾向、奇妙な目で見る使用人や関係者などの不可解な事項が不安を煽る。夢での「出してくれ!」という叫びには遺産を残してくれた伯父の死に主人公が関係していたのではないかと疑ってしまいました。一時期、猫も杓子も使った事実の発覚には「ヘレン・マクロイ、お前もかっ!」と思いましたがそこで一捻りしていたので苦痛も少し、和らぎました。でも主人公は従兄や周囲に対しては人の良さそうにしながら俗物だと内心、軽蔑していたりするので自分で思っている程、純粋でもないと思うけどね・・・。2013/01/20
星落秋風五丈原
40
今でこそなーんだと言われそうなトリックだけど当時は画期的だったのでは。2017/09/03
紅はこべ
39
冒頭から信頼できない語り手ものと宣言してあるのだから、どんな結末でも驚かない心構えで読んだのだが、ラストに至っても、残る疑問は多し。この小説の反転加減は『火刑法廷』も上回るかも。永遠に鏡の国に放り込まれたみたいだ。2010/02/26