内容説明
ミステリ短編の魅力を存分に味わえる、アイリッシュの作品集成第6巻。大都会のなかの人間の孤独、しのびよる死の影の戦慄、絶望と焦燥にさいなまれる犠牲者等、常に意表をつく技巧と主題の多様性に加えて、著者の独壇場ともいうべき哀切な雰囲気描写と緊迫したサスペンスは永遠に読者を魅了せずにはおかない強烈な磁力を秘めている。傑作「さらばニューヨーク」等13編を収録。
著者等紹介
村上博基[ムラカミヒロキ]
1936年生まれ。東京外国語大学独語科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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cinos
16
『アイリッシュ短編集』の最終巻。どれも映像的でオチがきいています。「三時」の皮肉な結末、「自由の女神」から消えた男、「送っていくよ、キャスリーン」の無実の罪をかけられた男(アイリッシュの得意技)。アイリッシュの短編、最高です。2018/01/08
Ribes triste
15
日常的な風景から、突然、非日常の世界へ引き込まれていく。そんな予測不能の13編の短編集でした。古さを感じさせない面白さです。2019/03/07
Tetchy
6
本作が今までの作品集に比べ、好印象を持ったのは前述したように意外な結末だけでなく、主人公の心理に同調できるような作品が多かったこと。本短編の作品順は出版元である東京創元社が決めたのだろうが、この並べ方はかなり良かった。短編集は作品の並べ方で傑作集と凡作集との評価が大きく分かれるのだろうと強く思った次第。「さらばニューヨーク」、「ハミングバード帰る」、「送って行くよ、キャスリーン」が個人的ベスト。2009/09/23
こみっく
3
短編集6巻の中でも特に好きなのが5とこの6。「送って行くよ、キャスリーン」は題名を見ただけで胸が痛くなる。「借り」はいい映画になりそうだし、「特別配達」の心温まるお話も好き。罪の意識にじわじわと狂気に追い立てられる男たち、そして時に翻弄されつつも現実に立ち向かう強さを持つ女たち。大好きなアイリッシュの世界。2020/05/23
ヴェラ
2
昔から大好きな作家だ。少し古風ではあるが華麗なスリルとサスペンスは折り紙付きだ。しかし私がこの作者に惹きつけられるのはそれだけではない。その作品にそこはかと漂う孤独の影だ。作者の不遇な晩年が連想させるのかも知れないが、いくらか感傷的な文体からも哀切な雰囲気が漂ってくる。特に「送っていくよキャスリーン」は何度読み返したことか。前歴ゆえに無実を信じてもらえない青年の、無念の思いがにじみ出ている。2024/02/28