内容説明
この世ならぬ美への憧れ、だがこの地上にその希いを適える術はあらかじめ失われているのだ…。未完の傑作『蒼白者の行進』、北軽井沢を舞台にした奇蹟の消失劇『光のアダム』、短篇『重い薔薇』『薔薇への遺言』、来歴を鏤めた『薔薇の自叙伝』等を収録。手を一閃して、虚空から花を掴み出すひと、流薔園園丁の供物。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふくしんづけ
4
未完だからという不満など出てくる筈もなく、むしろ未完すら読める僥倖。薔人くん再登場、と思いきや、こちらが先なのか。相手役との関係はもうちっと見たかったところ。劇中劇は些か退屈ながら、劇中劇を用いる必要性においては、これぞ至高、むしろこうあるべきだと。時間に対して、その奥にある四次元に対しての、形にならない空想を、ホラ、と形にして差し出される興奮。こうでこそ本当の異界なのだ。長編もよいけれど、「重い薔薇」でやはり短編こそだと。おこがましいのは百も承知だが、自分もこういうものを書くかなあ、と繋がるような多幸。2020/05/11
rinakko
4
どれも面白く読んだ中、好きなのは表題作。2014/03/25
karatte
0
読了日は判らないので適当に。本来は全冊買う予定だったが、結局三番目に出たこれで購入はストップ。2003/01/01
氷沼
0
「蒼白者の行進」は兄弟愛、同性愛といったタブーを幻想的に美しく描いており唯美的。「美」だけではなく血腥い事柄も出てきて、唯美的というだけではない所がいい。これが未完というのはつくづく惜しい。 同じく未完の作品「デウォランは飛翔したか」は、「蒼白者の行進」と違いイマイチでした。 軽井沢の森で繰り広げられる淡い幻想譚「光のアダム」。文章から色が浮かんでくるような、とにかく色彩豊かな文章で書かれている傑作。 「重い薔薇」、「薔薇への遺言」は淡くも濃い奇譚。 やはり中井英夫は凄い作家だ!おススメの作品!2004/08/22
メイ&まー
0
どんな作品を書かれるのかもよくわからないまま。読んでみると、そう古い時代の作家さんでもないのか~と思いつつも、なかなか手こずってページが進まず;ギリシャ神話や薔薇などが象徴する美しい世界と現実の苦悩や暗い部分が絡んで、そのあわいがいつの間にかぼやけてわからなくなっていく・・・そんな感じがしました。「光のアダム」の幕引きは私は結構好き、というか安心しましたけどね。。何はともあれ、「アンチ・ミステリー」と言われる『虚無への供物』を読まねば!2010/04/08