内容説明
ナポレオン帝政下、ロシア軍との激戦で命を落としたはずの英雄、シャベール大佐が生きていた。死亡証書を取り消し、再婚していた妻と自分の地位・名誉を取り戻すべく、大佐は代訟人デルヴィルの許へ。無一物となった男が法の力によって人生をやりなおすことはできるのか。人間の愛憎、社会と法、バルザック「人間喜劇」の真髄。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
10
ナポレオンの下で戦っていたシャベール大佐、アイラウの戦いで戦士したと処理される。8年ぶりに舞い戻ったパリ、ナポレオンの時代は終わっており、「私がシャベール大佐だ!」っと言ったら大笑いされるか、精神病院に閉じ込められるか。妻は別の男と結婚しており、自分の財産を好きに使っているのに、自分は場末(南東部、サンマルソー)で牛小屋の横でワラの上に暮らす。戦士したと思われた男が、実際にはカタレプシーで、真っ暗な共同墓地から這い出して帰ってみるとパリでは妻が再婚、とゾラの複数の作品への影響が見られる。2020/05/04
うた
6
「われわれの社会には、人を尊敬できない人間が三種類ある。それは、聖職者と医者と法律家だ」。これぞバルザックという中編。大枠に時代の変遷をおきながら、法と駆け引きと愛憎がこれでもかと盛り込み、話に奥行きもたせている。お説教にもやたらと悲惨な方向にも流されないバルザックのいいところがでています。2011/03/16
きりぱい
6
怒りよりやり切れなさが残る。ナポレオンの信任もあり、戦争で名を上げ勲章まで受けた伯爵だったのに、自分がシャベール大佐だという証明が出来ない屈辱と悔しさ。主張すればするほどあざけりしか返ってこない哀れな戦争の爪跡。唯一助けとなりうるはずだった辣腕の代訴人デルヴィルにも、狡猾なフェロー伯爵夫人と、プライドを傷つけられたシャベールの男の心の変化までは見通せなかった。怖ろしく過労働のデルヴィルだったけれど、もうちょっと頑張ってほしかった~2010/12/15
Hotspur
3
「なんという一生だ!…孤児院を出て、養老院へ死にに戻るとは!その間にナポレオンが、エジプトとヨーロッパを征服するのを手助けしたのだからなあ」 この創元社ライブラリのバルザック選集は後続がなく、これ一冊で中断しているように思う。勿体ない。2018/09/19
madhatter
3
シャベール大佐の自分への愛情を利用するのみにとどまらず、自分への軽蔑さえも利用してしまえるフェロー夫人が強烈な印象を残す。人間、良心から目を背けることは意外に簡単なのかもしれない。しかし、軽蔑によって踏みにじられた自尊心を無視することは難しい。彼女は軽蔑に反発せず、流されることでシャベールに勝利する。故に個人的には、この小説を、個人対法という構図だけで捉えたくはない。物語自体は単純なのだが、フェロー夫人の底知れない狡知が、この小説に奥行きをもたらしている。2010/05/21
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