出版社内容情報
遺品博物館は、その名の通り遺品を収蔵する博物館です。古今東西、様々な遺品を収集しております。選定基準については諸事情によりお話しできません。ただ、一つだけ申し上げるなら、その方の人生において重要な物語にかかわるものを選ぶことになっております――死者の人生において最もふさわしい遺品を選定する学芸員が出会った、八つの死の風景に隠されたさまざまな謎。『奇談蒐集家』の名手が贈る、死者と生者を巡る連作ミステリ。
内容説明
遺品博物館は、その名のとおり遺品を収蔵する博物館です。古今東西、さまざまな遺品を蒐集しております。選定基準については諸事情によりお話しできません。ただ、ひとつだけ申し上げるなら、その方の人生において重要な物語に関わる物を選ぶことになっております。“遺品”はときに、生者よりも雄弁である―謎の学芸員は、残された者に何をもたらすのか。
著者等紹介
太田忠司[オオタタダシ]
1959年愛知県生まれ。名古屋工業大学卒業。81年、「帰郷」が「星新一ショートショート・コンテスト」で優秀作に選ばれる。『僕の殺人』に始まる“殺人三部作”などで新本格の旗手として活躍。2004年発表の『黄金蝶ひとり』で第21回うつのみやこども賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
180
「その遺品にどんな物語があるか」遺品博物館の学芸員・吉田・T・吉夫が蒐集するにあたって語る選考基準。もう胡散臭くてならないのだが、8話からなる連作短編・・最後まで読んじゃった。タイトルから想像したのとはちょいと違ったが、そこには人の欲・愛憎・悲哀・・生存中には伝えられなかった思いが死して切々と迫る。だが、8話は食傷気味にも感じたのが正直なところ。子供の話は切ないなぁ。それにしても吉田学芸員のTが気になる。続編もあるってことか?私なら何を納めるのだろう・・2020/07/16
ちょろこ
138
様々な余韻、の一冊。遺品を収蔵するという遺品博物館。その学芸員 吉田・T・吉夫が手がける八つの物語。ドキッとしたり、ザラッとしたり、時にせつなくなったり、その後を想像したくなったりと…どれもこれも様々な余韻を味わえるそんな短編集だった。この吉田さん、容赦なく心の内に切り込む、謎を炙り出していく、そして時折 死者や遺族の心に寄り添う…と、切れ者かつミステリアスな雰囲気で気になるキャラ。「空に金魚を泳がせる」が一番せつなく心に残った。遺品の数だけドラマがあることを改めて感じる。章タイトルも表紙もお気に入り。2020/08/02
よつば🍀
110
「川の様子を見に行く」「ふたりの秘密のために」「燃やしても過去は消えない」「不器用なダンスを踊ろう」「何かを集めずにはいられない」「空に金魚を泳がせる」「時を戻す魔法」「大切なものは人それぞれ」8話収録の連作短編集。遺品博物館の学芸員で『吉田・T・吉夫』と名乗る人物が其々の家庭に遺品蒐集に現れ死者の背景を炙り出すミステリー。悲しい物語をイメージしていたがどの短編にも生者の毒が散りばめられていてピリリとした雰囲気。会話中心の文章は読みやすく吉田と遺族のやり取りが脳内映像に浮かぶ。新鮮なミステリーを堪能した。2020/07/05
ままこ
97
フルネームも謎めいた学芸員の吉田。故人の遺言により遺品を一品だけ収集し博物館に収蔵する。選定基準は生前の物語が感じられる物。遺品に込められた想いから隠された真実が浮かび上がる連作ミステリ。「ふたりの秘密のために」がよかった。2020/09/24
ひさか
64
ミステリーズ!掲載の8つの連作短編を2020年6月東京創元社から刊行。故人が、遺言で遺品博物館に寄贈すると、学芸員の吉田がやってくるという展開ではじまる謎ストーリー。いずれも工夫されたアイデアと興味深い展開で、謎を解き明かす吉田が面白く楽しい。ただ、寄贈された遺品の価値が低く、遺品博物館そのものの謎が残ります。2020/10/15