内容説明
「じつはフランス製じゃないんだ、フランス人形は」「そうなの?」ある春の日、八駒家に持ち込まれたプラスチックの箱の中身は「冬の室内」といった趣の舞台装置と、その右のほうで行儀よく椅子に腰かけている少女の人形。子供らしい快活を示すように、ひょいと天を向けた少女の右足のつま先は―こなごなになっていた。破損の責任を押しつけられそうな敬典の姿を見て、娘のつばめは憤慨するが、敬典は不思議と落ち着いていて…。きっかけは小さな謎でも、それらは八駒家の食卓の上で壮大なペダントリに発展する。『天才たちの値段』で鮮烈な印象を与えた新鋭が贈る、あたたかなタッチで描かれた愉しい連作。
著者等紹介
門井慶喜[カドイヨシノブ]
1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒。2003年、短編「キッドナッパーズ」で第42回オール讀物推理小説新人賞を受賞してデビューする。06年に刊行された初の著書『天才たちの値段』は、美術ミステリとしての濃厚な面白さと新人離れした完成度で話題となった。豊富な知識を縦糸に、物語を横糸にして巧みに独自のミステリを織り上げる気鋭(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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月子
28
日常ミステリーで、すっごい面白いという感じはなかったけど、短編一つ一つ蘊蓄もたくさんあってちょっとした時間に楽しみやすかったです♪ 2016/06/28
夜梨@灯れ松明の火
16
専業主夫=家主(とその子供)が日常の謎とも言えないような謎を解く連作。ビスクドールに始まり、花言葉や万年筆などのうんちく話もためになりました。2012/04/06
pom
15
旅行会社を退職し専業主夫…いえ、『ヤヌシ』として家事をこなす八駒さん。退職した会社の元上司や旅先で出会った見ず知らずの他人から相談事を持ちかけられる。自宅での料理やガーデニングの様子も楽しそうです。一人娘のつばめちゃんとの会話も謎かけの様でほほえましいです。退職の理由は明かされなかったので、まだ続編があるのかな。門井慶喜さんの小説は淡々とした中にもクスッと笑える会話が織り込まれていて、最近すっかり嵌まってしまいました。さあ、次は何を読もうかな…(笑)2012/03/30
horihori【レビューがたまって追っつかない】
14
元旅行代理店時代に培った知識を武器に専業主夫となった父親と中学生の娘が、会話の中で様々な日常の謎を解く連作短編。「人形の部屋」元上司が壊したビスクドールの秘密。「外泊1銀座のビスマルク」万年筆がきっかけで出会った男性の悩み「お花当番」隣に引っ越してきた人は同級生の知り合いだった繋がりから同級生の秘密を知る。「外泊2夢見る人の奈良」書道家になりたい青年の夢と現実「お子様ランチで晩酌を」娘が家出した。残されたメッセージを解き娘の居所を探し出す。2008/10/04
星群
14
いろいろ勉強になった。ビスケット、花言葉、羽根ペンのことが、特に興味深かった。娘のボーイフレンドの存在に動揺する父親と、仕事で留守がちな母親にかわって、父親の動向を気にする娘の関係が微笑ましかった。2011/07/27