出版社内容情報
画学生エリーは画商に騙され、ある資産家秘蔵の17世紀オランダ女流画家の作品の複製画を描く。それは真作とすり替えられ、彼女は贋作製作者となってしまう。真作を盗まれた資産家は探偵を雇い彼女の存在を突き止め、近づいたが……。40年後、過去を封印して美術史家として名をなした彼女が関わる展覧会に、あの時の「贋作」と盗まれた真作の二点が届き、彼女はすべてを告白する覚悟を決める。17世紀の女流画家の人生と、自らの罪を隠して生きてきたエリーの人生が、哀しく美しい絵と織りなす見事な人間ドラマ。
ドミニク・スミス[ドミニク・スミス]
著・文・その他
茂木健[モギタケシ]
翻訳
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
76
17世紀オランダの女性画家の絵を所有する資産家の弁護士が絵をすり替えられ、贋作に手を染めた大学院生エリーを捜しトラップする1957-58年(ブルックリン、マンハッタン)を中心に、夫の借金で画家組合ギルドを追われ極貧状態に陥った女性画家の登場する1635—49年(オランダ)、そしてキュレータとなったエリーの前に資産家の弁護士が真作をもって再会する2000年(シドニー)。この3つの時代に絵がもたらす人間ドラマ。美術好きには面白い小説です。2019/06/04
カレイ.シュウ
74
17世紀の女性オランダ人画家の唯一残された作品の贋作づくりに手を染めた美大生(後に美術学者)。彼女とその絵の所有者の中年弁護士が40年の時を経て、もう一枚の絵と出会う。お互いの後悔と孤独を徐々に癒していく様は暖かい。17世紀の女性画家の人生も描かれ最後に3枚目の絵で現代の美術学者と出会うのはお見事。17世紀の画家たちの暮らしや、贋作のテクニック、美術館の裏まで楽しめるポイントも多い。2019/09/02
seacalf
62
傑作。たっぷりと時間がかかるが、その時間はすべて極上のひととき。中世ギルド時代の女流画家パート、1960年代に贋作を描く羽目になった大学院生、先祖代々の絵を盗まれた上流階級の弁護士、そして現代と、中心人物の視点も時代も入れ替わりが激しいが、読む者を惹き付ける強い吸引力があるのでまったく問題なくのめり込ませてくれる。こういう作品に出くわせるから、読書はやめられない。あとがきはネタバレがひどいので先に読まずに取っておくのが吉。読メの皆さんの感想でたどり着けた一冊。おすすめ。2018/11/03
Panzer Leader
59
「第122回海外作品読書会」17世紀のオランダの女流画家とその作品を巡る物語。「古書の来歴」と同じ様な雰囲気を醸し出しておりながらもそこまで傑作であるとは言えないが、3つの時代軸を行き来しながら進む物語はなかなか読ませる。現代篇二人の男女の主人公パートより女流画家の生涯の方が心惹かれちょっとバランス悪しだが、最後に二人の女性の交わる場面は感動的。2018/11/25
りつこ
46
面白かった!ミステリーなのかと思ってよんでいたけどミステリーではなかった。17世紀オランダの女性画家サラの生涯を語るパート、サラの絵の贋作を描いた女子大生エリーと自宅の絵を贋作と置き変えられた資産家のパート、それから彼らの現在のパート。彼らの物語が混じり合うラストが素晴らしく、この物語を読んでよかったとしみじみ。面白かった。2018/08/08