出版社内容情報
『結晶世界』『ハイ・ライズ』などの傑作群で、叙事的な文体で20世紀SFに独自の境地を拓いた鬼才の全短編を五巻に集成。最終巻には予言的傑作「戦争熱」「第三次世界大戦秘史」など25編収録。
内容説明
想像力の最先端。現代SFに多大な影響を及ぼした巨匠の全短編を執筆順に集成する決定版全集、堂々完結。
著者等紹介
バラード,J.G.[バラード,J.G.] [Ballard,James Graham]
英国を代表する作家。1930年、上海生まれ。「探求されねばならないのは外宇宙ではなく、“内”宇宙である」として、SFの新しい波運動の先頭に立った。終末世界を独自の筆致で美しく描き出した“破滅三部作”と呼ばれる『沈んだ世界』『燃える世界』『結晶世界』や、濃縮小説と自ら名づけた手法で書き上げた短編を発表し、その思弁性が多くの読者を魅了した。2009年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
澤水月
23
今巻は精神の「遁走」と異次元への飛翔を絡めた「太陽からの知らせ」、孤独な変人と宇宙への偏執に共鳴「月の上を歩いた男」、本邦初訳「火星からのメッセージ」(ラスト一文が最高!)など絶品だらけ。「第三次世界戦争秘史」は天皇退位話題の今新訳で改めて既視感に戦慄。1988年発表!何月執筆だろう。基本発表順、で初期から晩年近くまで飛行・渇いたプール・遺棄された巨大施設、自然に飲まれる人工物、超現実主義絵画など繰り返されていたこと、人物の名付けも意味ある事多いと改めて知る。16年9月からの叢書完結、関係者に感謝(コメ続2018/03/03
vaudou
13
全集も最終巻。長編の前にまず骨子となる短編を書いていたバラードなだけに、こうして柳下さんの解説込みで、バラードの内宇宙における恒星たる長編と、周囲を構成する惑星ともいえる短編を耽読し続けた期間は、実に楽しく有意義な時間であった。第三次大戦の予感に充ちた数編や「コカイン・ナイト」の助走的短編に続いては、宇宙を志向する人間の限界を描出する。第5巻の読みどころはまさにそこで、ポスト宇宙時代小説の三部作は、その最深部に到達する。80年代にここまで・・永遠の光輝に包まれる「近未来の神話」は、溜息の出るような傑作だ。2018/03/02
月世界旅行したい
13
ギブスンの寄稿あり。2018/03/02
rinakko
11
最後までみっちり楽しめて、大変満足な最終巻だった。とりわけお気に入りは、「暴走する妄想の物語」や「太陽からの知らせ」「宇宙時代の記憶」「巨大な空間」「世界最大のテーマパーク」「戦争熱」「死の墜落」。「未確認宇宙ステーションに関する報告書」や「ヴァーチャルな死へのガイド」の乾いた作風も好きだ。2018/04/16
シロビ
10
終わってしまった…。記録をみると、一巻を読了したのが2016/12/26。定期的にバラードの文章を摂取する生活。楽しかったなぁ。何より、バラードの書く物語が与えてくれるイメージが好きだった。鳥・飛行機・生命力のある植物・炎・水のないプール・割れたサングラス・宇宙飛行士・音響彫刻・感受性を持つ家、服・宝石のような昆虫・砂鱏…強迫観念・抽象化・観察される急速な生態系の進化・無時間・マスメディア・JFK……。読んでいる、というよりは、絵画を観たときの考える楽しさ。2018/03/02