作家たちの秘密―自閉症スペクトラムが創作に与えた影響

ブラウン，ジュリー【著】〈Ｂｒｏｗｎ，Ｊｕｌｉｅ〉/府川 由美恵【訳】

東京書籍（2013/05発売）

• サイズ B6判／ページ数 315p／高さ 20cm
• 商品コード 9784487807376
• NDC分類 902.8
• Cコード C0023

出版社内容情報

アンデルセンやルイス・キャロルら、欧米の著名な作家たちの人と作品を、「自閉症」という切り口で紐解く新しい伝記集。

アンデルセンやルイス・キャロルら、欧米の8名の作家たちの、独特な人生と作品に焦点をあて、「自閉症」という概念から解説をして人物像を提示する伝記集。
その執筆プロセス、読み手の軽視、型破りの設定、独特な語り口や独創的な登場人物、細部へのこだわり、豊かな象徴主義、テーマ、言語などから、彼らの特徴をあぶりだしていく。

内容説明

科学や数学の歴史的な発見や発展において自閉症が大きな役割を果たしてきたことは、『天才の秘密』『アスペルガーの偉人たち』などの書籍や『ビューティフル・マインド』『モーツァルトとくじら』といった映画ほかで徐々に知られるようになってきています。何人かの作家や音楽家、芸術家や科学者が神経学的に他者と異なっており、それが言葉や音や色の独創的な使いかたや物事の捉え方に影響したり、特異な生活をしてきたことが示されたことは“自閉症的文化”の認識への重要な一歩でした。著者ジュリー・ブラウンは、本書でさらに踏み込んで、文学において自閉症スペクトラムが作品の創作に与えた影響について考察していきます。作家の伝記・自伝・日記や手紙・手書き原稿などから執筆プロセスを洞察し、彼らの故郷を訪ねてその足跡を感じつつ丹念に語っていきます。本書を通じて、読者は従来抱いてきた作家像が異なってみえてくることでしょう。

目次

１　序論
２　ハンス・クリスチャン・アンデルセン
３　ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
４　ハーマン・メルヴィル
５　エミリー・ディキンソン
６　ルイス・キャロル
７　ウィリアム・バトラー・イェイツ
８　シャーウッド・アンダーソン
９　オーパル・ウィットリー
１０　自閉症の自伝作家たち

著者等紹介

ブラウン，ジュリー［ブラウン，ジュリー］ ［Ｂｒｏｗｎ，Ｊｕｌｉｅ］
ライティングと文学の教師として２０年以上教壇に立つ。彼女の最初の文学批評となる２作品、『アメリカの女性作家による短編小説』『マイノリティとアメリカの短編小説』は、文化的に社会のすみに追いやられた作家たちの作品を探求している。ボランティアとして自閉症コミュニティに関与し、オレゴン州アストリアのクラトソップ・コミュニティ・カレッジで自閉症の学生の学術アドバイザーも務め、みずから企画した『文学における自閉症』のコースで教鞭をとっている

府川由美恵［フカワユミエ］
１９６６年生まれ、明星大学教育通信部（教育学コース）卒（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[harass]

自閉症スペクトラムは発達障害の総称で、アスペルガーやADHDなどのことをいうそうだ。画家や音楽の場合は予想が着くが文学者や作家ではどうかと気になり手にとった。特有の作風や例をあげている。アンデルセン、ソロー、メルヴィル、ジョイス、ルイス・キャロル、イェイツ、シャーウッド・アンダーソンなど。他人の心を読みきらないために、人物造形が薄っぺらくなるが、逆にファンタジーキャラを創作するのに特化するなどとありいろいろ面白い。特異な精密描写や言葉遊びや言葉にできないことを象徴として表現することが多いという。

2016/08/02

[源次／びめいだー]

一部の自閉症の人々が科学や数学の分野で成果を上げるという話はしばしば聞きますが、文学の分野に足跡を残した人も一定数いたんですね。興味深い内容でした。ところで、読書メーターに登録されている書名と実際のそれが微妙に違っていますね。リンクされているアマゾンのサイトでは正しい書名ですが。

2015/12/21

[Glitter]

障害が文学の新しい境地を切り開いた過程に感動した。 馴染み深い連作短編小説は情報統合の障害から生まれたというのは目からウロコだ。自閉スペクトラム症の人の創作は構造化のテクニックを駆使することで大きく幅が広がると再認識できた。

2018/03/16

[あきら]

挙げられた作家に有名な人が多かった（アンデルセン、イェイツ等）ので手に取った。他の人の記録等からASDっぽいと判断して、文章の特徴を挙げてここがASDっぽいと書いてあったけど、でも推測ですよね…と思ってしまった。昔の人なので推測で診断するしかないのはわかるけど。 ASD当事者としては、「〜ができない」ばかり書かれてて引っかかった。昔の人も「普通の人」に馴染めなくてだいぶ苦しんだのはよくわかった。

2022/09/08