出版社内容情報
《訳者あとがき》より
『アンナ・カレーニナ』が世に現われて百有余年、その間どれほどの人々がどれほどの思いでそれを読んで来たことであろう! どれだけの涙がアンナのために流され、どれだけの人がレーウィンと共に信仰を求めて悩んだであろう! モナ・リザの微笑にも似た謎を湛えて我々においでおいでをするこの作品、晩年の漱石をして《これほど偉大な小説は未だかつて読んだ事はない》と嘆ぜしめたこの作品、もはや世界人類共通の所有に属するこの作品を、なるべく大勢の日本の読者に結び合わせる役割を、私の拙い翻訳が些かでも果たし得るならば、喜びこれに過ぐるものはないと思う。(一九七九年八月)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
31
アンナは自分で自分の首を締めてしまった格好だが、こうならざるを得なかった彼女の心の動きは怖いほど伝わってくる。夫に対する不満が臨界点を超えた途端、嫌悪と憎しみしか感じなくなってしまったこと。社交界から敵視され息子も失い、ウロンスキイだけが頼りの生活の中で、疲弊した精神と過剰な愛情がやがて妄想を生み、嫉妬の炎が燃え上がり破滅へと突き進んでいったこと。もう一方の主役キティ夫妻が幸せな夫婦の典型なので、アンナとウロンスキイの悲劇がよけい際立つ。プロットの巧みさと壮絶な心理描写を両立した稀有な作品。[G1000]2017/01/09
yuki
4
北御門訳で読み終えることができました。トルストイという人が語る人の生き方について考えさせられました。アンナとウロンスキイの不幸と、キティとレーウィンの幸福、アレクセイのかたくなさ、無責任な人々… 読むことができてよかったです。2019/01/14
バーベナ
3
キティとリョーヴィンの新婚時代における混乱の日々。もう、どうしてこんなに共感できるの。アンナとヴロンスキーの憎愛に嫁姑、世間との折り合いも、100年以上経っても、人は同じことで悩み怒り、嫉妬する。なんて面白いんだろう。今更ですが、小説の面白さにまた目覚めた気がします。2018/03/02