出版社内容情報
デモクラシーから関東大震災の時代、反軍・廃娼を主張したテキヤたち、大杉栄虐殺報復に命を懸ける一群に身を投じた男。歴史の闇に埋もれた者たちの姿を追った。
内容説明
縁日や祭りを追って、旅から旅へ。行く先々で反軍・反戦を訴え、娼妓の解放を唱えたテキヤたち。厳しい弾圧にさらされながらも、ときに特高警察を煙に巻き、また遊郭の用心棒と激しく衝突し、血みどろの活動を繰り広げた。何が彼らを駆り立てたのか?底辺に生きた者たちの生々しい戦いの軌跡を探り出す。1920年代の無名の寅さんたちの義理と人情と相互扶助のこころが、格差と貧困が進行する現在を逆照射する!
目次
第1部 テキヤの社会主義運動(香具師社会の深層;和田信義と添田知道;運動と弾圧;てきやの廃娼運動と演歌師;関東大震災と露店ラッシュ;てきや社会の再編)
第2部 アナキスト香具師とギロチン社(高嶋三治の実像;大杉栄虐殺とギロチン社;東海の顔役)
エピローグ(てきや社会の特殊性;戦後のてきや社会;てきや社会の行方)
著者等紹介
猪野健治[イノケンジ]
1933年滋賀県生まれ。新聞・雑誌の記者、編集者を経て、ジャーナリストとして活躍中。とくに、やくざ、右翼、総会屋などをテーマにした分野では、先駆的な役割を果たすとともに、現在も第一線で取材・執筆活動をつづけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
39
テキ屋。香具師(やし)とも呼ばれ露天で小商いをする稼業の総称だが、必ずどこかの一家(組織)に属し、厳しい掟があり博徒などとは違い正業に就く人々であった。表題に「寅さん」と入っているが、彼の様な一匹狼、根無し草な行動は許されず、フィクションの産物と切り捨てる。しかし、加入を望む者の、前科・出自を一切問わず、一人前になるまで面倒を見る、まるで社会主義の理念そのものの様に思える。戦前の格差激しい時代、義侠心と左翼思想が結びつき、一部が活動に参加して行った。戦後のGHQの弾圧、偏見によってテキ屋は死活の境にある。2016/03/29
tsu55
7
関東大震災を挟んだ短い期間、反戦・反軍、廃娼運動に身を投じた社会主義者のテキヤがいたという。 誰でも前歴を問わず差別なく受け入れるテキヤの世界は、当局の目を逃れる社会主義の活動家にとって絶好の隠れ家であった。一方テキヤのなかには、貧困や破産からその世界に足を踏み入れたものも多く、社会主義に共鳴する下地があったということのようだ。出版物や古老からの取材の他、テキヤを取り締まる側の警察関係の資料も駆使して近現代史の暗部に光を当てている。2015/06/15
午睡
5
フーテンの寅さんは映画の中で「よっ!労働者諸君」といったことをよくいう。あれが寅さんなりの社会主義への共感であるのは承知していたが、昭和初期、治安維持法が制定される前後に香具師たちが身を投じたのはアナーキズム運動だったという。 読みながら、ずっとバロン吉元のマンガ「柔侠伝」シリーズを思い浮かべていたが、あのマンガに登場する社会主義への共感を隠そうとしない香具師、博徒、任侠の男たちは、たしかにこの社会に実在していたんだなぁと、静かに感動する。大杉栄とともに虐殺された橘少年の隠された墓碑に頭を殴られる思い。2020/05/26
カラコムル711
3
ヤクザに詳しい猪野氏の本。週刊誌的なヤクザ記事ではない。結構学術的。テキヤなるものを、知らない人に教えてくれる。テキヤとヤクザ(賭博をする)とは違う。そのことを教えてくれて、最近の臭いものにふたの警察行政では、これを一緒くたにしている。そうしたファッショを批判する。同感である。社会には隙間や余裕が必要なのだ。 2015/03/06
長老みさわ/dutch
2
テキヤ=露天商と社会主義者は表面上相容れないように思えるが、主義者が隠れ蓑にするには格好の場所だった。 大正末期から一気に盛り上がり、戦時体制下で壊滅したアナキストを中心に当時のテキヤとアナキストの関係を描いたノンフィクション。 連載ものなので同じ説明が何度も出てくるが、終盤の高嶋三治とギロチン社の話は迫ってくるものがあった。 2015/06/14
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