出版社内容情報
昭和初期を中心に、青年たちはなぜ超国家主義に魅入られ、時にテロルへと走ったのか。二四人の人物に光を当て、行動の原理を探る!
内容説明
救いは、国家との合一!?人生に苦悶し、不安に苛まれた戦前期の青年たち。救いを希求し、政治活動へと傾斜したその帰結とは?形を変えながらも、現代日本に今なお伏流する超国家主義、その核心に迫る!
目次
第1章 自然とユートピア
第2章 愛と恍惚の全体主義
第3章 不平等・革命・テロ
第4章 敗北のパトス
第5章 弾圧
終章 煩悶と超国家
著者等紹介
中島岳志[ナカジマタケシ]
1975年生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。博士(地域研究)。現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。南アジア地域研究、近代日本政治思想を専攻。『中村屋のボース』(白水社)で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞を受賞
頭山ゆう紀[トウヤマユウキ]
1983年生まれ。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。写真家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
37
もちろんいまの価値観から超国家主義について愚劣と断じるのはたやすい。だが、本書を読んでいると桁外れの知性あるいは繊細さをそなえていた男たちが、生きづらさや挫折(誰もが経由するだろう恋愛などに由来するもの)を通じてそうした熱狂的な思想の魔性に溺れていく、そのさまがありありと伝わってくる。その果てにあるのは、著者が引き合いに出す『エヴァ』がえぐり出したような自己と他者が合一する究極の境地なのか。だが、著者は保守の立場からそんなユートピアを夢見ることを諌めて厳しく引導さえ渡す態度を貫く。それを支持したいと思った2025/02/11
軍縮地球市民shinshin
14
戦前の超国家主義者の思想を一人ずつたどりながら、誕生から暴発して破綻するまでを描いている。個人の「煩悶」の解決から自己と国家を同一視して、テロリズムに走った思想的経緯がよく分かるように描写されている。しかし肝心の「超国家主義」とは何なのか?「国家主義」とはどこが違うのか明確に述べられていない。丸山真男あたりが超国家主義を流行らせたのだろうが、丸山にしても「超」を付けた意味はなんなのだろうか。こういった専門用語の定義を厳密にしないで、「雰囲気」で議論をしているのがこの国の政治学や歴史学の専門家なのである。2018/07/03
ゆうきなかもと
13
「終章 煩悶と超国家」が凄すぎる!中島岳志のナショナリズム思想がギュッと濃縮されている。 「理想的価値を体現する国家と同化することで、自己の煩悶を解消する」という戦前の超国家主義者たち。 しかし、現在でも、まさにネトウヨとかそんな感じだ。「美しい国日本」という言葉にもそんな危うさを感じる。 本書あとがきにも、エヴァンゲリオンの映画との類似性なんかも取り上げられているが、 日本人は百年前から本質的に何も変わってないのかも知れん。 2019/04/26
ara
3
中島岳志の本は、いつも凄く読みやすく、単に事実の羅列ではなく内容にストーリー性があるので、引き込まれて没入しながら読むことができる。 「国家」をbeyondして現実の国家を超越した価値を見出す「超国家主義」。 昭和維新はその典型ではあるが、本書で紹介されていた超国家主義者はほとんどがテロ等の暴力によって体制側の打倒を目論んでいた。 また、精神の拠り所として日蓮宗に傾倒している人が多く、一君万民の国体思想のもと、資本主義を否定し社会主義国家を理想としていた。 しかし信じていた筈の天皇にも裏切られるのである。2024/06/03
amanon
3
現状に憤り、より良き世の中を目指して行動を起こし、時にはテロをも辞さない。しかし、その思いは儚く潰え、体制に飲み込まれていく…かつては、保守とか右翼と名のつくものにはアレルギー的な拒否反応を覚えたものだが、ここで取り上げられている活動家の経歴を見ると、その純粋な志につい心を打たれてしまう。また、その大半が不遇な境遇にあり、やり場のない鬱屈を抱えていたという事実には、共感を禁じ得ない。それから、かなりの活動家が、神がかり的な体験をしていたという事実に驚かされる。その体験に超越者の意思が働いていたのか?2020/09/23