内容説明
知性と五感をフルに使って「世界中で最も誤解されている古典小説」を、とことん読みこむ。“あたま”と“からだ”の融合から、新しい生の地平を拓こうと挑む、野心的で切実な論考。
目次
第1章 生きよ、すっと、そっと、静かに、動け
第2章 『チャタレー夫人の恋人』の現在、作者の人生と仕事と時代
第3章 精読一 時代の悲劇、個人的な悲劇、異性愛と性交のかなたの身体知の学び
第4章 精読二 性交から生の動きへ
最終章 生の動きと身体知教育―体と言葉のコミュニケーションとコミュニティ構築へ
著者等紹介
武藤浩史[ムトウヒロシ]
1958年生まれ。英国ウォリック大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。慶應義塾大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zirou1984
43
これは興味深い。猥褻小説として毀誉褒貶の激しい『チャタレー夫人の恋人』翻訳者自らが表現の音韻分析まで踏み込みながら、本書がいかに観念と肉体を結び付け、身体性と言語的思考の接続へ踏み込もうとしたのかを精読により明らかにしていく。何より興味深いのが、最後に紹介される著者の行ったワークショップだ。朗読やダンスのトレーニング、他者と「触れる」セッションを通じた上で前書の解釈を行っていくこの試みは、読書を私たちの知っている読書の向こう側へ、読むことと経験することを結びつける身体知の可能性を切り開こうとしている。2014/12/15
うさぎさん
2
この一冊には詰め込みきれないほど言いたいことがあるのだろうな、と思わせる書。 一般向けに『チャタレー夫人の恋人』の学術的考察を展開するにあたり、本文はやや乱暴な印象があるが、註釈を参考にすれば問題ないので、試しに読みたい人も深く勉強したい人も両方に有効なのでは。 文学は実学だと述べ、チャタレー夫人の一般的イメージの払拭を冒頭で試みにより、本書への入り口を広くすることにも成功している。2016/07/22