内容説明
18世紀後半から19世紀後半までのフランス革命を含む百年は、近代の諸問題が一気に沸騰した「豊かな危機」の時代であった。この時期の文学・芸術・思想をおおう巨大な精神運動であるロマン主義の全体像に、今日的な視点から多角的に迫る。
目次
序 ロマン主義を考えるために
1 ロマン主義とその時代(墓地からの光景;血の祝祭・民衆・表象の力―1835年頃のブールヴァール劇を通して見たユゴーとバルザック;四つの変奏;フランスとハイネ;フランス革命とロマン主義)
2 まなざしの変容(セラファンの劇場―アロイジュス・ベルトランの散文詩とロマン主義時代の光学魔術;風景画の覚醒;視覚のエクリチュールへの道―ボードレールと風景画;閉ざされた空間の寓話)
3 テクスト間の照応(思惟する「熱狂」―スタール夫人における「反省」;小石の山;受難への偏執―ボードレールとフランス・ロマン派;風の言語―クローデルの中のユゴー像をめぐって)
4 ロマンティック・ヒーローと「私」(自然から想像力へ;『愛慾』あるいはプロテウスの戦略;テクストと「私」―ルソーにおけるナルシス問題;「私」語りの変容―モーリス・ド・ゲランと新しい言語の探求)