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内容説明
悲劇の小国アルバニアの青年作家はなにを見たか。パステルナークのノーベル賞受賞をめぐってクレムリンの神々がまきおこすイデオロギーの嵐。民族の桎梏に破れさる恋。スラブ神話や民間伝承をモチーフに描く自伝的小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
121
アルバニアの作家カダレの自伝的な作品。カダレのモスクワへの留学時のことが描かれている。50年代のソ連の社会の雰囲気が鮮やかに伝わってくる内容で、興味深かった。特にノーベル文学賞を受賞したパステルナークを批判する動きがソ連全体で強まって、国が批判一色に染まる過程には、恐怖を感じた。リアリズムの小説の中に、ふと幻想が顔を出すところが一番魅力的で、幻想文学としても読める内容。スラブ神話の神々とソ連の実力者を重ね合せる趣向は面白い。大国に翻弄される小国出身者の悲哀がよく伝わってくる物語だった。2016/09/16
藤月はな(灯れ松明の火)
81
作者がソ連に留学した時の経験を基に描かれた青春小説。噛み合わない会話と募っていく相手への慕情の面白い対比が微笑ましい。いづれ、また、会おうと約束を交わした二人。しかし、情勢による大国の変化はささやかな約束すらも翻弄していくことになる。白が徐々に黒に変わっていく速度性。生き残るために信じてきたものが間違っていたと堂々と宣言されてしまった事への恥と憤り。個人としての感情か、民族としての誇りか。ラストの選択はほろ苦い。しかし、反対の選択をしたとしても別のほろ苦さと喪失の痛みとがあっただろう。2019/05/11
miyu
34
「芸術は人間を見捨てない。その死後でさえも。雪は誰の上にでも降る。その死後でさえも。これほど確かなことはない。孤独は孤独でしか癒せない」カダレの作品はどれも読み始めからすぐに胸にグッと迫る何かがあるが、この作品は不思議と淡々とした違和感を覚えつつの読書となった。作者が実際にソビエトに留学していた時代の話でほぼノンフィクションのせいか逆にその懐に入り込むのが難しかった。それでもパステルナークがノーベル賞を受けたことへのソビエト全体の異常なほどの非難轟々の嵐辺りからは息もつかせぬたたみかけ方で一気読みだった。2017/06/22
gogo
12
1950年代末のモスクワでの留学生活を振り返った自伝風の小説。妖精のように美しい恋人と白夜の夏休みを過ごしたバルト海沿いの保養所での思い出、ソ連各地から集まった文学徒たちとの議論と酒盛り、体制によるノーベル賞受賞作家への弾圧と学生たちの鬱憤など、ソ連体制下での学生生活の悲喜が綴られる。折々に語られる母国の伝承や説話からは、大国のマジョリティーに囲まれながらも、決して揺るがないアルバニア人としての誇りが読める。結局、スターリン主義を固守したアルバニアはフルシチョフの怒りを買い、主人公は帰国することとなる。2015/07/26
刳森伸一
7
著者のロシア留学時代の体験を基にした小説。パステルナークのノーベル賞受賞時のロシア国内の状況など興味深い記述も多いが、小説としてはそれほど面白くはないかな…2019/03/23