内容説明
グリマング、ウーブ、オトウサンモドキ、フクセイetc.ディックおなじみの奇妙な「動物たち」が大活躍するキッチュな預言の物語。待望の本邦初訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
147
P.K.ディックの子供用SFです。大人でも楽しめます。地球でペットなど愛玩動物を飼えなくなりほかの星へと移住するのですが、その星にはさまざまな動物がいて、ということでかなり楽しめます。子どもばかりではなく、ディックファンでも見逃せないと思われます。ディック独特の生物というような感じです。2017/02/08
新地学@児童書病発動中
110
ディックが残した唯一の児童文学。「農夫の星」へ移住したニック一家の冒険を描く。児童書といっても大人向けの長編と共通点が多い。奇妙な動物がぞろぞろ出てきて、現実が揺らいでしまうところはいつものディックの世界だ。ウーブ、フクセイ、スピッドルなど少し不気味だが、かわいい異星の動物たちが、この物語に彩りを添えている。特にいろいろなものを不器用に複製するフクセイには笑った。ポール・ディマイヤーによるキュートでシュールなイラストが素晴らしく、一見の価値がある。猫好きな私はニックの飼い猫のホレースの活躍が嬉しかった。2017/02/05
キジネコ
36
物語の中の物語に躍動する登場人物、創り上げたのが作者であれば彼らにとって作家は神なのか。人口過密の地球を離れ植民星に移住した家族の物語。そこは私たちが踏むリアルの陸続き。解説者がそっと云う「この本を抱えて今すぐ逃げろ!」と。何からと考える時、物語の奥からジッと目を凝らす不明のグリマングに震える。それは感動なのか、それとも訳も知らず流す冷たい汗、悪寒なのか。本書は児童書らしい。子供に理解の届く物語は子供だけのものではない。フィルター越しにデイックが囁く「私の消えた世界は、どんな風だい」う~ん、又謎が…2017/02/11
sin
35
再読です。以前読んだ感触があまりよろしくなかったので、あえて今日(12月16日)ディックの誕生祝いに読み返しました。ジュブナイルを意識しすぎて崩しきれないディックのまじめさが感じ取れました。もっと破天荒だったらもう一つ新たなディックの世界が誕生したのではないでしょうか?2013/12/16
TSUBASA
19
地球では人口が増え過ぎて満足な仕事も無く、ペットを飼うことも法律で禁じられていた。ニックは飼い始めた猫を護るべく、また父はやりがいのある仕事を探して一家で「農夫の星」へ移住することに。その星は現地生物とグリマングとの戦場だった。ディック唯一の児童文学と言うことでだいぶ意外だったけど、奇妙で個性的な生物たちを魅力たっぷりに描いている。近づいたものの姿をコピーして成り代わろうとする植物オトウサンモドキとか何故か語尾に「〜の町」とつけるスピッドルとかディックの奇想が楽しい。すっとぼけた感じのイラストも良い。2015/09/16