内容説明
無類の毒舌と優しさ、資産家で吝薔、一流好みで食魔、俗物嫌い―宮本百合子との同棲でも知られるロシア文学者湯浅芳子。その稀な個性を、交友三十数年の著者が、深い人間観察と絶妙の表現で、縦横無尽に描き出す。
目次
はじめて逢った頃
逃げた恋人
軽井沢の別荘
タクシー代
形見のきもの
もらいそこねた絵
ふるさと京都
俗物嫌い
猫の子
老人ホーム騒動〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さと
47
湯浅芳子、宮本百合子、田村俊子といった作家たちの存在を今日まで知らなかった事を恥じながら、こうして新たな出会いへと導いてくれた寂聴さんに感謝。人 が好きなんだなぁ と率直に感じた。湯浅芳子 という作家、友達(⁇)女性を寂聴さん自身さらに知っていく一冊だったように思う。当時は、人の腹の中に生じた思いをその人が言葉に換えて伝え、耳にした人は発っした人の人となりを織り交ぜ解釈したのだと思うが、今や自分の思いだけを乱射するようになり、人 を知る機会が奪われつつあるように思う。2022/11/24
しき
8
ロシア文学者湯浅芳子を、彼女と交流のあった瀬戸内寂聴が綴った評伝。終盤に紹介される宮本百合子との関係を読むと、簡潔な記述にも関わらず、芳子の人柄や心が伝わってくる。でも、芳子は基本的に暴君で、魅力を感じないなぁ。湯浅芳子という人物よりも、彼女を見つめる寂聴さんの温かい眼差しが胸に響く一冊だった。2010/11/18
moyin
7
相変わらず瀬戸内風に憶測の部分がある。湯浅さんに対する瀬戸内の媚びと毒舌はちょっと不可解。2022/10/25
がぁ
4
今の世の中に生きる人たちに比べて、激烈な生き方の多いこと。時代のダイナミズムが人をそうさせるのか。湯浅氏の周りにいた、芯の太い、静かな人たちの口調が印象に残った。2011/11/03
じゅんじゅん
1
傲慢、横暴、勝手、ケチな人とは誰しもが付き合いたくないと思ってしまうが、それでも寂聴氏は湯浅芳子と親しくしていた。傍若無人な態度を取っていてもときたま見せる優しさにコロッと参ってしまわれたのでしょうか?寂聴氏の懐の深さはさすがです。湯浅芳子、作家として名をなさなかったら狷介固陋ではなくただの業突く婆です。2014/02/27