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内容説明
ドル化とは、日々の経済活動において、国内通貨のみならず米ドルなど信用力が高い外国通貨が使われる経済現象である。財政破綻を迎えた新興国においてその動きが顕著だが、いまや先進国最悪の財政を抱える日本でも、人々が資産防衛の為に預金を米ドルに交換し、日々の決済を米ドルで行う日がやってくるかもしれない。本書では歴史的なドル高の裏で世界的に進んだドル化の分析を通じて、日本で行われている経済運営の見直しを提言する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
8
東西統一直後のベルリンで1920年代のハイパーインフレ時代に発行されたゼロが12個あるマルク紙幣を入手した。またソ連崩壊後のモスクワでは新刊のハードカバー本を3ドルで購入できた。どちらも通貨の信用が失われ紙屑と化した証だが、モバイルバンキングが普及し簡単に外貨を購入できる今日ではトルコやアルゼンチンのように通貨崩壊のスピードはさらに速まる。円を信じて疑わない日本人だが、改めて先進国最悪の財政状況と無資源ぶりを突きつけられると強い警告を受けた気分だ。もっと外賀建て金融商品を買うべきか。それもドル化なのだが。2019/11/23
Barca
4
「日本が発行する日本円の信認は、米ドルとは本来比べ物にならないほど脆いはずだ。日本に求められることは本来、日本円の信認を維持することにある。少なくともいたずらな円安誘導ではないはずだ。」(p.223)2019/12/17
Kooya
3
自国通貨と共に米ドル等の外国通貨を利用する「ドル化」を解説した本。過去の事例を参照しながら「ドル化」の進展がもたらす影響を論じている。金融政策は基本的に自国通貨で行われるため、外国通貨の浸透が政策対応の余地を狭める点は容易に想像できる。もっとも、本書で展開される論理自体は典型的な財政破綻論者の理屈(例:日本の公的債務残高は先進国の中で最悪の水準にある→いつかは破局を迎える)であり、大半は日銀の見解や経済学者の意見を通じて反論済みであるため、「過去の通貨危機の特徴を知るための本」として読むべきだと思った。2023/12/06
ワカバ
2
自国通貨の信認を守るため、金融政策の転換を図り、財政健全化を目指すことの重要さや、輸出産業が優勢だった頃からの円高性悪説の根深さについて諸外国の例を引いて分かりやすく書かれていたように思う。本書が書かれたのは2019年であり、諸外国が積極的な財政出動を行なったコロナ禍や欧米全体を巻き込むロシアのウクライナ侵攻を経て、各国通貨の信認がどう変化したのかという点について興味が湧き、今後のニュースに注目したいと感じた。2025/02/28
美東
2
良書。従前と異なり企業が海外に生産拠点を移してしまった以上、円安に誘導しても国内経済は改善しない。日銀のやっていることは実質的に財政ファイナンスと何ら変わらない。なので今後、日本円の価値が毀損していくのは避けられないだろう。2020/02/02