内容説明
今から300年まえ、鬼怒川ぞいの小村にひとりの悪霊祓い師が現れ、14歳の若妻の憑き物をおとす。絶大な人気をもって市井の人々に迎えられたこのエクソシスト、祐天上人とは何者か?彼の呪術を最も支持した、江戸城大奥の女たちの心底に澱む不安とは?ついには、浄土宗教団のトップにまで登り詰めた一悪霊祓い師の虚像と実像。
目次
序章 「口ばしり」の伝承
第1部 霊媒伝承(羽生村事件;悪霊祓いの伝説;隠された幼児殺し;因果の図式)
第2部 江戸の悪霊祓い師(聖者の伝説;女の霊力信仰;水子と捨子;虚像と実像)
第3部 霊媒伝承をめぐる付論(累怪談『桜小町』考;南北・馬琴の試行錯誤;怪談の寺)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐倉
16
再読。1690年刊の『死霊解脱物語聞書』に記録された羽生村で菊に憑いた父の前妻・累の霊と累の異父兄にあたる助の霊を祓った祐天の物語について読み解いていく。浄土宗にあって巫覡として名を上げていった祐天。一時は教団を離脱した彼が大僧正に抜擢される異例の人事には徳川綱吉母の桂昌院の帰依があった。そこには畜生と同じ扱いだった女性や子供への宗教的庇護者としての活動が絡んでいるという。祐天の活躍する物語には出産や水子に纏わるものが多く、桂昌院のみならず大奥にも支持されるような領域の巫覡だったのが感じられる。2025/08/18
佐倉
9
下総は羽生村の若い女・菊に憑依した怨霊。それは菊の父の前妻である累と名乗った。怨霊は菊の父、そして村全体の罪を告発する…という真景累ヶ淵の元となった事件とそれを解決した浄土僧・祐天を通して江戸の呪術世界を描いてく。東照宮の造営に伴う絹川の河川工事、村人にとって新たな信仰であった仏教、そして生類憐みの令。信仰や社会通念の変化の中で活躍した祐天。彼自身もまた浄土僧でありながら祓魔師であり女性や水子霊の救済者という境界線上にいるものだった。道祖神でもある地蔵菩薩の再来と呼ばれたというのも何たる符号というべきか。2022/12/31
ホンドテン
1
図書館で。今や有名かどうかわからないが真景累ヶ淵の元になった悪霊払い談の解説。2016/01/10




