出版社内容情報
受賞作「birth」(山家 望)と最終候補4作品をすべて収録。選評(荒川洋治、奥泉光、中島京子、津村記久子)と受賞者の言葉なども掲載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
五常一
2
最終候補作の4作が収録されている。好きだったのは「私鉄系第三惑星」だった。一見、それぞれは「それでどうした」とツッこんでしまいそうな、視点人物の所感というか見たものの描写が積み重なっていくのだけど、その積み重なりのうえに視点人物が自分自身の周囲のもの・人との関係を掴みかねている戸惑いが現れてきて、視点の在り方と人の在り方が一番深くリンクしていると感じた。選評を読んでも、受賞一歩手前だったらしい。作者は他の文学賞でも候補に残る書き手みたいなのでデビューに期待している。2021/08/02
だけど松本
1
受賞作birthをめあてに読む。悪くはないのだけど、自分にとっては面白くない方の純文学というふうに感じてしまった。面白かったら他作品も読むつもりだったが受賞作が好みではなかったので他は読まなかった。2023/04/06
Minno
0
受賞作と私鉄系第三惑星について、伝統の作法に従ってるが故に文章は悪くないが、二階から降りられない文三という見飽きるほど繰り返された失敗、、的な奥泉氏の選評。なるほどですね。 私の感想としては、2作とも主人公の心の動きをひたすら書いてあるのだけど、その動きも振り幅がかなり小さく、動くきっかけにしても他者との関わりに拠らない。そういう時代ですね的なことを映したいのかもしれないけど、もう手垢がつき切ってませんか。なぜそういう思考になったのか、これからどうしたら変われそうなのか、提示する文学があってもいいのでは。2022/02/01