出版社内容情報
水に落ちた犬は打つべし。一切の妥協を許さず容赦なく旧社会の儒教道徳や「正人君子」を批判し続けた中国近代文学最大の功労者の生き方を考える。解説 佐高信
内容説明
「水に落ちた犬は打て」「私は人をだましたい」あの『故郷』の作家は、私たちに何を突きつけるのか。
目次
第1章 幻灯事件
第2章 没落読書人の子
第3章 日本留学
第4章 革命、そして沈黙
第5章 『狂人日記』
第6章 民族魂
巻末エッセイ 「日本でこそ、魯迅は読まれなければならない」佐高信
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
羽
15
『阿Q正伝・狂人日記』を読書会で紹介するにあたり副読本として読んだ。自分のことを棚に上げ、無知で、旧時代のしきたりや考え方を無批判に受け入れ、何事にも反省せず、つねに誰かのせいにして目先の利益ばかり追求する阿Qのような思考や生活態度が、当時の弱国・中国をつくり上げたと魯迅は考えた。また、儒教中心の古い考え方や古い制度が人々の意識の中に染みついており、それが中国を前進させない大きな要因になっていると考えた。それらが作品の背景にあるという。今もなお、私たちは慣習やしきたりにとらわれていないかと考えさせられた。2021/06/25
フム
5
これも図書館の児童書コーナーにて。魯迅は教科書で『故郷』を読んだだけであるが、そこに描かれていた故郷の民衆に対する思いが印象的だった。少年時代憧れの存在だったルントウの変わり果てた姿。人間らしさや尊厳を奪う旧社会に対する絶望。見いだそうとする希望。結びの言葉「もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。」旧態依然として変わらない社会は今の日本も同じだ。そう思いながら、魯迅の言葉を噛み締める。2016/03/13
みこよこ
1
魯迅といえば「阿Q正伝」…くらいの知識しかなかったのですが、このちくま評伝シリーズはコンパクトにわかりやすくまとまっているので、心配なく読み進められました。 周りの人や、時代に流されることなく、自分の考えに率直に従い、発信し続けた人。安全な場所にいてもっともらしいことを言う「正人君子」や旧時代のしきたりや考え方を無批判に受け入れる中国人が今の中国を作り上げてしまったのだ、という強烈なメッセージが彼の作品に込められています。2016/05/05
chiro
1
負うべき責任はある。実に困る2018/07/22
ビシャカナ
0
教科書でしか知らなかったが、これほどまでに中国の民族意識、旧態依然とした社会構造に向き合い、失望と再起を繰り返していたとは驚いた。魯迅いわく中国の民族意識に奴隷根性があるとは意外だった。魯迅の時代とは逆に衰退する日本と勃興する中国の時代になった今となっては、魯迅に共感と憧憬を抱く気持ちがある。2019/09/13