出版社内容情報
西洋文明の草創期には何があり、人類はどのように文明を築いたか――。聖書を中心に芸術や遺跡などをてがかりに、「文明のはじまり」について読み解く。
内容説明
ヨーロッパ文明は、メソポタミアとエジプトを親として生まれた。ではその最初期に何があり、どんな風に人類は文明を築いてきたか。聖書の記述をてがかりにわかりやすく解き明かす。
目次
はじめに―エジプト人はフンコロガシを見て何を思ったか
第1章 ノアの洪水は本当にあったか―世界中にある「洪水伝説」
第2章 なぜ巨大遺跡は古代にしかないのか―神と王と民の権力構造
第3章 古代人の世界観―文明と神話の成り立ち
第4章 古代文明の実像―古代人の暮らしをのぞく
おわりに―古代文明を殺したのは誰か
著者等紹介
池上英洋[イケガミヒデヒロ]
1967年広島県生まれ。東京芸術大学卒業、同大学院修士課程修了。東京造形大学教授。専門はイタリアを中心とした西洋美術史・文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
125
「起源」への興味もさることながら、今の視点から神話を見る行為そのものにわくわくさせられた。例えば、ノアの箱舟のサイズは五百人乗りで地上の五百万種の動物は乗り切れないなど、神話のアラが見えたり、或いは神話のツギハギ跡が見つかって、古い神話の向こうにもっと古い祖型が浮かびあがったり。神話が拵え物であるということは、決して神話の価値を下げはしない。むしろ神話を伝えてきた人の営み(言葉や移動や対立…)に目を向けることによって、それまで遠く隔てられたものと思っていた神話が、意外に身近な存在であることに気づかされる。2019/09/12
さつき
74
洪水伝説の伝播やバベルの塔にこめられたユダヤ人の思いなど興味深いエピソードがたくさん。人類が自らの存在を認識していく中、創造神話がどう生まれてきたのか。動物と我々を分かつものは何なのか。古代人たちの考えに思いを馳せるのは面白かったです。数々の民族の神話に似た話しがあることも、同じ人間が考えている以上、発想が似かようのでしょうね。2020/12/17
molysk
55
西洋文明の母体となった、古代のメソポタミアと地中海地域。人類はどのように文明を築いてきたのか、どのような出来事があったのか。これらの歴史を、聖書の記述を中心に読み解く。例えば、ノアの洪水。メソポタミアの大規模な川の氾濫が、文字として記録されて、シュメールからアッシリア、そしてユダヤ民族へと伝わり、旧約聖書に採り入れられたのではないか。そして、アレクサンダー大王の東征を経て、ギリシャ、続いてローマへと広がりを見せた。ほかにも、バベルの塔はバビロンの塔など、古代から現代文化への影響を説明する、興味深い記述。2021/07/11
M
15
様々な神話や聖書の逸話を元に、古代の文明の形成過程や影響関係を取り上げている。時系列から考えても、ヨーロッパ文明の母体は古代オリエント世界の影響を受けており、一例を挙げれば、なぜ旧約聖書にバベルの塔のエピソードがあるかなど、その過程の一部を考察している。神話や宗教には世界の説明機能があったことは理解したが、当時の平均寿命や環境などを考えた時に、何故私はもう死ななければならないのかと涙した存在が思い浮かんだ。文化圏の境界領域はある程度定まっているが、世界は常に新しい物語とその転換点としての象徴を求めている。2019/08/15
ジュンジュン
13
著者は美術史家、にもかかわらず専門分野に偏ることなく、メソポタミアとエジプト文明を概説。取っ掛かりとして、有名な「ノアの方舟」と「バベルの塔」から入り、テーマに明確な主義がある。当初は「餅は餅屋」かなとも思っていたが、読後は入門書として最適だと改まった。2021/01/26