内容説明
世界の宗教というと、ニュースはテロや事件のことばかり。子どもたちは学校で、他人の宗教とどう付き合うよう教えられているのか。信者の子どもたちの暮らしぶりはどうか。欧米・アジア9か国の教科書を実際に確かめてみよう。
目次
第1章 アメリカ―イスラムを敵視しているのか?
第2章 イギリス―となりの○○教徒と学び合う
第3章 フランス―スカーフ禁止の国の宗教の教え方は?
第4章 ドイツ―ホロコーストへの反省の上に
第5章 トルコ―イスラムは特別かワン・オブ・ゼムか?
第6章 タイ―日本の仏教をどう見ているのか?
第7章 インドネシア―ソフト・イスラムとクルアーンの関係
第8章 フィリピン―宗教のサラダボウルはどうできたのか?
第9章 韓国―3分の1がクリスチャン。そのライバルは?
著者等紹介
藤原聖子[フジワラサトコ]
1963年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科・文学部准教授。東京大学文学部卒業、シカゴ大学大学院博士課程修了(Ph.D.)、大正大学文学部教授を経て、現職に至る。専門は比較宗教学。2009年より高等学校倫理教科書の執筆・編集に参加(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Miyoshi Hirotaka
35
その昔、宗教、政治、軍事は一体。キリスト教の国教化、カノッサの屈辱など聖俗の協調や対立を経て絶対王政で聖俗の関係が逆転するまで千数百年。わが国でも仏教の導入から信長と石山本願寺の武力対決を経て徳川幕府の寺社奉行による統治まで千数百年。宗教は民族、国家などと対立と一体化を繰り返し、今に至っている。政教分離は近代化と相関性が高いが、国家と宗教の最終形ではないだろう。一部では宗教はビジネスという割り切りもされている。今の姿は歴史の断面。各国が政治と宗教の関係のあるべき姿を模索しているし、それはこれからも続く。2016/10/29
kakoboo
25
9カ国の学校の教科書を通じて宗教教育がどのように行われているのかを取り上げている比較宗教学の入門書です。私たちは国教のみを各国の宗教と見なしがちですが、そこには少数派の想いも考慮した多様性を受容する取り組みが見られました。非常にわかりやすい文章でとっつきやすいので、無宗教と言われがちな日本人の目から見て、各国の宗教教育の一面を見るという意味でもおすすめの1冊です。2015/12/30
活字スキー
25
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、トルコ、タイ、インドネシア、フィリピン、韓国の学校で実際に使用されている教科書を通して、各国が宗教とどのように付き合っているのかを解説。センセーショナルなニュースからは偏ったイメージしか伝わってこないが、各国がそれぞれの事情をふまえながら、多様性の容認と、国家や民族としての統一性を模索している事がよく分かる。経済原理だけでも、宗教原理だけでも、世の中丸く治まりそうにないが……まずは互いに知る事、知ろうとする事から始めるしかないのだろうな。2015/06/10
Francis
16
猫町倶楽部スピンオフ読書会の5月の課題本。各国の教科書で宗教はどのように教えられているか知ることが出来る。現在は多くの国でも他の宗教に対する寛容に配慮していることがうかがえる。宗教についてあなたはどのように考えるか、を実際に考えさせる授業も多くの国で実践されていることも理解できた。日本では恐らくこれらの授業は出来ないだろう。繰り返しになるけどそれは山本七平氏の言う「空気の支配する国」だからだと思う。2021/05/12
やまやま
15
宗教をどのように学校教育で取り扱っているか、教科書という題材を通して国別比較をしている。教科書は建前が書かれているのが前提であり、実社会での価値観とは違うが、社会が安定的であるためには宗教に調和と寛容が求められると各国ともおおむね語られる。フランスは「宗教の排除」を公教育に求めるが、これも難しかろう。教育において異質に触れる機会を多くすべきか、という点は 常に微妙な関係を含み、例えば日本でも同和や在韓の課題についてどのように教育で扱うかはいまだに模索の状態であるが、考えさせられました。2019/11/12