出版社内容情報
西欧のキリスト教宣教師たちは、日本史上にいかなる反作用を生み出したか。教会領長崎での事件と秀吉による「バテレン追放令」から明らかにする。
内容説明
天正十五年(1587)、豊臣秀吉は九州平定のため、大軍を率いて出陣。博多に凱旋し、戦勝祝いのさなか、「バテレン追放令」五カ条を発布した。日本でのキリスト教宣教に関する禁令である。キリシタン大名・高山右近を家臣団から排除したことと併せ、イエズス会士たちに強い衝撃を与えた。諸宗派間の平和共存を構想していた秀吉が転回をなすに至った背景には何があったのか。それは日本史上にいかなる反作用をもたらしたか―。イエズス会が支配する教会領長崎で起きた事件と、「バテレン追放令」を記す二つの文書の検証から、日本とヨーロッパの象徴的衝突に迫る。サントリー学芸賞受賞作の改訂増補版。
目次
プロローグ キリスト教と戦国日本の出会い
1 神の平和(教会領長崎における「神の平和」)
2 バテレン追放令(「バテレン追放令」とその影響;バテレン追放令とキリシタン一揆;秀吉と右近―天正十五年六月十八日付「覚」の分析から)
補論(長崎開港と神功皇后との奇しき縁;「岬の先端」の歴史と「精霊流し」)
エピローグ
著者等紹介
安野眞幸[アンノマサキ]
1940年神奈川県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院博士課程単位取得満期退学。弘前大学名誉教授。専門は対外交渉史、法制史、都市と市場の研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
8
この著者の『下人論』や『港市論』を昔読んだ記憶があつた。全く内容は忘れてしまつたが、余り日本中世史の主流の論文のスタイルではないといふ印象は、本書にも感じた。良くも悪くも我が道を行くスタイルである。良いところは、日本中世史が、発展段階論やアジア的生産様式論の延長で各論を組み立てたのに対し、著者はそれらから自由だといふことである。書かれた時期がさういふ時代ではなかつたからだとも言へるが、史料をその書き手であるイエズス会の論理から再検討するなど、その分類手法の成否はともかく、世界史との親和性が高い仕事である。2025/01/09
冬至楼均
1
旧版と比較しながら読了。旧版の表題部分が書きおろし差し替えとなっている点に研究の進歩が感じられる。全体の論旨は変わっていないと思う。2024/02/04
Fumoh
1
かつて秀吉が出したバテレン追放令について考察している。長崎に居ついたポルトガル人およびイエズス会宣教師。秀吉がなぜバテレンを追放したのかは、いくつもの理由が考えられるが、決め手となったことはいまいち定かではない。宗教観、文化、経済、軍事的側面から紐解いていくという論考だが、著者の論はストレートにまとまっておらず、かなり分かりにくい。また文献をいかように読むかといった、文献分析に関する話がかなり長く、その歴史文化的評価の方まで話が回らない。結局なにを言いたかったのか、わからない本になっている。2023/12/24