出版社内容情報
われわれが親しむギリシアとローマの古典は、現在の形を取るまでに紆余曲折を経てきた。書写された複数の本から原典を正確に復元し、保存すること、そして伝承すること。本書はその営為の過程を追う。古代における書籍取引の実態から始まり、巻子本から冊子本への変化、カロリング時代に増加する本の生産、書体の発展、ルネサンスの校訂学など、興趣に富んだ説明がなされる。テクストの存続には物質的要件に加え、時代ごとの学問や教育態勢も大きく与っていた。文献保存に注いだ人々の情熱を伝える名著。文庫化に際しては、原著第四版を底本とした。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フクロウ
1
エラスムス、ロレンツォ・ヴァッラ、スカリゲル、カソーボンなど、『テクストの擁護者たち』(と、もちろん木庭顕「法的政治的観念体系成立の諸前提」及び『人文主義の系譜』)で見知った方々が沢山出てくる。笑 古代ギリシアやローマのテクストがなぜ現代で読めるのか、という謎。そこには、基本的には偶然性に依拠して、たまたま写本なり剽窃なりプリンパセストなりの形でテクストが残ってきたという奇跡がある。そして、テクストの真偽を確かめるための思索や技法の洗練も。もっとも、完璧な探究法則はなく、フィロロジーは知の総合格闘技。 2025/06/20