出版社内容情報
「実用的なことが同時に美しいというわけにゆかんものだろうか?」。文筆家で夢想家で反逆者。縫いあげたスキャンティにはリボンを結び、ふわふわしたあじさいや百合の花びらで埋めつくせばいい。犬たちとの秘密のおしゃべり、日向にまどろむ猫との逢瀬、ドレスの下ではフラメンコのリズム、風変わりでゆかしい娘時代、甘酸っぱく怜悧な恋……。ものづくりへの情熱とかなしみを抱えながら、光の一粒を掬って宝石箱にしまう日々がここに。唯一無二の香りを放つオリジナル作品集。
踊り子たちは公演の前はめいめい自分の衣裳は自分で縫っていた。練習場の床に黒タイツの脚を投げだしながら、無器用な手つきで色とりどりのチューチュの仕上げをしていた。いまから花が咲こうとしている花園の風景にそれは似ていた。
そうだ。私もおどろう。婦人記者で、しかもバレエなどかるくこなせるなんていいじゃないの――(本文より)
【目次】
わたしとしごと
夕刊紙のかけ出し記者
のら犬たちが呼んでいる
ピンクのガーター・ベルト
下着屋三日目
スキャンティ生れる
のら犬 のら猫
ボケと初めて出くわした
ボケの友だち
切符うりのおばさん
アカ毛のジャン
焼跡のクロ
トラトラと出逢った
おばあちゃんとタマ
靴屋のミー
よせやの猫
オフィスの猫、アラン・ラッド
子ども時代 娘時代
お母さんが抱いてくれた
子供服
男の子と女の子の遊び
父が贈ってくれたお雛様
おでかけ
ブーツと長靴
ゼリー物語
大人になりたくない
父との汽車の旅
アイスクリーム時代
フラメンコ 旅 女ともだち
オーレ・フラメンコ
黄金の脚と銀の指
ひたすらな美しい顔
こげついたパエージャー
フラメンコの日々
おんな二人の旅
光の島、クレタ島
不在証明の女
深夜の救急車
ピエトラ・サンタのクリスマス
編者解説 近代ナリコ