出版社内容情報
連載二十周年を超え、いよいよ快調なキシモトさんの不条理日常エッセイ「ネにもつタイプ」第3弾を文庫化。ボーナストラックとして単行本未収録回を大量増補。加えて文庫版あとがきを付す。奇想天外、抱腹絶倒のキシモトワールドが読めるのはちくま文庫(と『ちくま』)だけ!
内容説明
「セキュリティ対策で訊かれる子供の頃の親友の名前が思い出せない」(「ひみつのしつもん」)、「部屋のなかに見知らぬネジが落ちている」(「ネジ」)、「自尊心を保つため家のなかで自分よりダメなやつを探す」(「哀しみのブレーメン」)、「花火で打ち上げられる夏の思い出」(「花火大会」)etc.日常の裂け目から広がる奇想天外、抱腹絶倒のキシモトワールド!『ちくま』名物連載、文庫化第三弾!!イラストはクラフト・エヴィング商會。
著者等紹介
岸本佐知子[キシモトサチコ]
上智大学文学部英文学科卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
72
岸本さんのエッセイ4冊目。1冊目「ねにもつタイプ」は外で読んでいて、笑いをこらえるのが大変でした。思わず鼻水を吹き出してしまいそうになったことも。2冊目3冊目と、岸本さんのマイペースさに笑いだけでなく少し不気味さも感じるようになり、今回はその不気味さが闇へと深まったような気がします。『分岐点』実話の中に、いつの間にか岸本さんも登場し、現実と空想の分岐点なのか、いや、ひょっとしたら正常と狂気の分岐点なのか、とにかくここから離れなくちゃと思ってしまいました。岸本さん、この本はフィクションですよね。2024/05/21
ナミのママ
71
『ねにもつタイプ』『なんらかの事情』に続く3作目。文庫化にあたり11話が増えている。あるあると思えるものと、それはありですか?と思えるもの、えーっ?と驚くもの、とにかく思考が豊か。「秘密の質問を忘れて永久にログイン不可」これはあるある。妄想がディストピアに変化して大丈夫かと心配したり、自虐ネタが痛すぎて気の毒になったり。あちこちの眠っていた感性をつつかれ頭がすっきりした気がする。「面白い」のひとこと。2024/04/30
キク
68
「この人が翻訳してるから」という理由で翻訳本が売れるのは、柴田元幸と岸本佐知子ぐらいだときいたことがある。優れた翻訳というのは、「ある概念を、きちんとした日本語として、自分の文体で語り直す」ということだから、柴田も岸本も、エッセイがすごく上手なんだろうな。今まで読んだ女性のエッセイでは、1番好きだった。言葉のプロが、すごく洗練された文体と上品なユーモアで、自らのちょっと足りない日常を語っている。読書の好き嫌いは様々だけど、「自分に合うかどうか」を確認するために一度読んでみる価値は十分にある一冊だと思う。2024/12/15
藤月はな(灯れ松明の火)
50
岸本佐和子さんのエッセーは「生まれ間違えた感」を抱えながらも日常の些末な事に心を写す事で日々を何とか過ごしていくエッセンスがいっぱい。日常か想像か、分からない語りが描く日常はまるで万華鏡のよう。マーラーが作曲したみすぼらしい小屋を奪取するも理想の執筆小屋にふさわしくはならないどころか、追い出されたマーラーはちゃっかり、順応している様を想像し、噴く。それにしても吉幾三に刺激され、作った交響曲は是非とも聞きたいぞ!自分より、惨めなものを集めるのもみみっちさよりもブレーメン隊を組むという意外性にほっこりするし、2024/12/29
nemuro
47
先月「コーチャンフォー旭川店」にて「笑いがこみあげる奇妙な世界。微妙に増量して文庫化」の帯が気になり『ねにもつタイプ』を購入。で、今月初旬、JRでの「富良野~滝川~札幌~函館」間・小旅行の帰路、「三省堂書店札幌店」にて購入の本書。「PR誌『ちくま』名物連載『ネにもつタイプ』第3弾」らしい。「翻訳家の頭のなかの大冒険」。うむっ嫌いじゃない、独特の文章が63本。36番目「組織」に「たとえば人々を洗脳して私の名前を必ず『佐和子』と書き間違えるように仕向けたり」と出てきて、えっ!?我が間違いに初めて気付いた次第。2024/10/25