内容説明
自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。(解説・東畑開人)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kanonlicht
520
昨今、多様性が大切と言われるようになり、いわゆるマイノリティとされる人たちへの理解と権利拡充が社会課題にもなっているけれど、この先どれだけ理解が進んだとしても、当事者の本当の気持ちをそうでない人たちが知ることは難しいんだろうな(だからといって理解しようとする努力が無駄だとは思わないけど)。こんな人間の根幹にある問題をいろんな立場の人の視点をより合わせて小説にしてしまう著者はすごい。願わくば、肩身の狭い思いを抱える人たちが心から信頼し合える同士とつながりあえますように。2023/08/06
はにこ
380
この本を初めて読んだときは八重子が不快だったんだけど、二回目読んだら田吉とか夏月のショッピングモールの女の方がよほど不快だと気付く。もちろん押し付けの理解は好きじゃないけどこれもこの人の考え方。だけど 田吉達は露骨にマイノリティーを蔑む。それが何か嫌だった。もちろん人に危害を加えたり迷惑かけるのは良くない。でもそうしなきゃ欲を満たせない人はやはり我慢するしか無いのか。2023/11/22
Apple
375
多様性を謳う社会の、非常に脆いポイントをついたような小説だと思いました。結局、正しいもの(マジョリティ)•新たに認めるもの•それでも認められないもの、という3つの構造になってやしないか?と考えさせられました。ある倒錯を抱えた登場人物たちが感じているように、なんらかの繋がりができるというのがまず大事なのかなと思いました。物語は後味の悪いかたちで終わってしまったわけですが、寺井啓喜や八重子といた正しい側の面々も、なにか考えるきっかけを得たのではないかと思われるようなわずかな希望のある終わりだと感じました。2023/11/18
ゆきこっち
373
『正欲』まさにピッタリくるタイトル。なるほどね。2023/09/19
みこ
349
正欲。人として正しい性欲とは何なのか。主に三人の複数の視点で物語は進む。それぞれ別々の世界の住人と思われた三人がやがて交わるようになり、我々の価値観も揺るがされる。どんな感想を書いても自分にブーメランが帰ってくるような「何者」と同じくらい意地の悪い小説である。個人の価値観を周りに押し付けることは以ての外だが、理解を押し付けることも人を傷つけかねないことの思いを寄せなければならない。ATフィールドは今も昔も存在する。2023/07/13
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