内容説明
自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。(解説・東畑開人)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Kanonlicht
584
昨今、多様性が大切と言われるようになり、いわゆるマイノリティとされる人たちへの理解と権利拡充が社会課題にもなっているけれど、この先どれだけ理解が進んだとしても、当事者の本当の気持ちをそうでない人たちが知ることは難しいんだろうな(だからといって理解しようとする努力が無駄だとは思わないけど)。こんな人間の根幹にある問題をいろんな立場の人の視点をより合わせて小説にしてしまう著者はすごい。願わくば、肩身の狭い思いを抱える人たちが心から信頼し合える同士とつながりあえますように。2023/08/06
はにこ
437
この本を初めて読んだときは八重子が不快だったんだけど、二回目読んだら田吉とか夏月のショッピングモールの女の方がよほど不快だと気付く。もちろん押し付けの理解は好きじゃないけどこれもこの人の考え方。だけど 田吉達は露骨にマイノリティーを蔑む。それが何か嫌だった。もちろん人に危害を加えたり迷惑かけるのは良くない。でもそうしなきゃ欲を満たせない人はやはり我慢するしか無いのか。2023/11/22
Apple
434
多様性を謳う社会の、非常に脆いポイントをついたような小説だと思いました。結局、正しいもの(マジョリティ)•新たに認めるもの•それでも認められないもの、という3つの構造になってやしないか?と考えさせられました。ある倒錯を抱えた登場人物たちが感じているように、なんらかの繋がりができるというのがまず大事なのかなと思いました。物語は後味の悪いかたちで終わってしまったわけですが、寺井啓喜や八重子といた正しい側の面々も、なにか考えるきっかけを得たのではないかと思われるようなわずかな希望のある終わりだと感じました。2023/11/18
ゆきこっち
427
『正欲』まさにピッタリくるタイトル。なるほどね。2023/09/19
まさきち
350
昨今もてはやされている「多様性」という言葉。その言葉の根底には社会的に「正」とされる価値観があってこそ成り立つものであり、何者をも受け容れるような雰囲気を孕んだこの言葉こそがよりマイノリティを孤立させていくと感じながらの読了です。2024/02/21
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