出版社内容情報
ぼっちマンガのアンソロジー。水木しげる、滝田ゆう、つげ義春、かわぐちかいじ、近藤ようこ、いましろたかし、太田基之、斎藤潤一郎らを収録。
内容説明
落伍、無用、風狂、隠遁…。ぼっちを生きる。
著者等紹介
山田英生[ヤマダヒデオ]
1968年生まれ。内外タイムス、アサヒ芸能記者などを経て、現在では、書籍、コミックの企画編集、雑誌記事の取材執筆に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keroppi
70
ちくま文庫の漫画アンソロジー、今回のテーマは「孤独」。孤独とは、他者と相容れないこと、それは寂しさであり、悲しみであり、恐怖であると同時に、安らぎでもあり、喜びでもある。様々な孤独を描く漫画たち。巻頭の諸星大二郎「地下鉄を降りて…」は、今読んでも傑作だと思う。ジョージ秋山「パットマンX」も懐かしい。初めて読む作品も多いが、こういう漫画を描いている作者も孤独なんだろうなと思う。自分自身、読んでいる時は孤独の楽しさに浸っているが。2024/01/09
HANA
69
「効率」や「利益」が至高の善とされる現代社会だが、本書の主人公たちはそれからはじき出させるか背を向けた人物ばかり。読んでいて思い出さされるのは「隠遁」とか「隠棲」という言葉。収められているのはほぼガロ系の漫画ばかりなのだが、その言葉がその絵柄とマッチしていて独特の雰囲気を醸し出している。ガロ系もどちらかというと漫画の裏道的な所あるしね。個人的に白眉はうらたじゅん「思い出のおっちゃん」清く正しい社会が抹殺したものがノスタルジアと共に語られていて忘れがたい印象を残す。現代社会に馴染めない読者に薦めたい本です。2023/12/13
Vakira
52
ちくま文庫さんのこのシリーズは好き。懐かしい漫画に出会えるし、知らない漫画家さんにも出会え、読書の幅が広がるのでありがたい。本屋で発見すると思わず購入してしまう。今回のテーマは「孤独」。最近、ヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」を見たので、孤独は寂しい訳ではなく、案外充実しているのでは?なんて気もする。なるほどね。編集の山田さんの選定が上手いのだ。落伍、無用、風狂、隠遁、エピローグと5パターンの孤独にまつわる作品を選出。みんな面白い。永島慎二さん こういうの上手いな。2024/01/30
読特
42
地下街を彷徨っていたら、地上へ出られなくなる。階段を上へ上へと、上がって行ったら、なんとそこは…。冒頭の一話から衝撃を受ける。「落伍」「無用」「風狂」「隠遁」。4つのテーマの作品群で「孤独」を追求する。しみじみ感じ、ずんずん進む。…仲間がいて、話が弾んでいる中で、一人を感じるその瞬間。風船のような、空気の膜のような、包んでいる何かがある。その内側には誰も入って来れない。何かに浸りたい。「ああ、あの人も寂しかったのかなぁ」と追想する。”独り”はつらい。「孤独」と表現することでそれが少し楽になる。2024/03/31
道楽モン
28
漫画という表現手段の驚くべき多彩さは、本シリーズの様な優れたアンソロジーを通読することで判る。それぞれの読者にとって未知な宝物を発見する大きなきっかけとなる。長い年月にわたり、多数の漫画家によって描かれた膨大な作品たちすべてに目を配るなど不可能であり、それこそマニアや研究者によって発掘されサルベージされることで、私たちは埋もれた名作と邂逅するのだ。著名な作家の知られざる作品や、忘れ去られようとする作家の名品を、手軽な文庫本で手に取れる事の幸運を見逃すことなかれ。ガロ系の作家たちは、震えるほど素晴らしい。2023/12/18