出版社内容情報
17世紀パリ、リシュリュー枢機卿の企てを阻止するために運命により選ばれたのは、一人の町の床屋だった! 稀代の物語作家による伝奇歴史小説。
内容説明
17世紀パリ、ルイ13世の宰相リシュリュー枢機卿は貴族勢力の一掃を決意し、陰謀をめぐらしていた。一方、運命がその企てを阻止するため選んだのは、自らを高貴の生まれと信じる町の床屋テュルリュパンだった。フランス大革命の150年前に画策された共和革命という奇想、時計仕掛めいたプロットがきりきり動いて物語は転がり落ちるように展開していく。稀代のストーリーテラーによる伝奇歴史小説。
著者等紹介
ペルッツ,レオ[ペルッツ,レオ] [Perutz,Leo]
1882年プラハ生まれ、ウィーンで活躍したユダヤ系作家。『第三の魔弾』(1915)。『ボリバル侯爵』(20)。『最後の審判の巨匠』(23)、『スウェーデンの騎士』(36)など、幻想的な歴史小説や冒険小説で全欧的な人気を博した。1938年、ナチス・ドイツのオーストリア併合によりパレスティナへ亡命。戦後の代表作に『夜毎に石の橋の下で』(53)がある。1957年没
垂野創一郎[タルノソウイチロウ]
1958年、香川県生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
38
むかしむかしパリにとんでもなく思い込みの激しい床屋の若者がおりました。名前はテュルリュパン。自分が貴族の御落胤と信じているテュルリュパンは、いわくつきの葬式で自分をじっと見つめる女性こそが生みの母である!と確信し訪ねる決心を。ところが名宰相リシュリュー枢機卿のもと、泰平の世であったはずのパリは、風雲急を告げようとしていた。しがない床屋の若者が当代きっての権力者とどうやってつながりを?という疑問は、360度ひねってもとの位置に戻して「なぜこうなった?」を作り出してきたストーリーテリングの冴えをご覧あれ。2022/05/13
かわうそ
23
主人公が思い込みと勘違いのままに突き進むシチュエーションコメディ的なやつ、と思わせつつ実は…なんじゃない?と疑わせる思わせぶりな描写がポイント高し。ミステリーじゃなくてもどんでん返しの気配が漂ってくるだけでワクワクしちゃうんですよね…2022/04/27
maja
20
1642年の「聖マルタンの日」、その日に向かって人々の高揚とともに刻々と時は迫る。十二使徒小路に暮らすテュルリュパンは自身が選ばれし存在だと信じる小さな床屋の夢想家の青年であって、天の啓示のごとく公爵夫人が自分の母親だと思い込む。神は近くまた遠い。フランス共和国を夢見る宰相リシュリュー枢機卿のもと手筈はすでに整った企ての大きな流れを、ひとりの男の思いこみが図らずも転覆させていくという可笑しみと哀しみの物語。 2022/06/28
本木英朗
19
フランスの小説家のひとりである、レオ・ぺルッツの長編のひとつである。17世紀パリ。ルイ13世の宰相リシュリュー枢機卿は貴族勢力の一掃を決意し、陰謀をめぐらしていた。一方、運命がその企てを阻止するために選んだのは、自らを高貴の生まれと信じる町の床屋テュルリュパンだった――という話であるが……。うーん、途中からさっぱり分からなくなってしまった。やはりレオ・ぺルッツの作品は、ちょっと俺にはダメであるようだ。……とりあえず以上です。2022/05/29
鐵太郎
18
聖マルタンの日とは、11月11日のこと。1642年のこの日何が起きたのか、というより、何が起きなかったのか。この年の12月4日に死去したリシュリュー枢機卿はなにを画策していたのか。その壮大な企てをつぶしたのが、思い込みが非道い間抜け男の大真面目なコメディだったとはどういう事なのか。──読み終えるとすごい話だと思うけど、主人公の言動にいらいらさせられっぱなしでした。(笑) とはいえ、史実の約150年前に「フランス革命」がありえたのかについては、正直わからんな。2022/07/05