出版社内容情報
日常、家族、身辺。世界を新たな「低い目線」から捉える。楠勝平/つげ義春/永島慎二/近藤ようこ/高野文子/つげ忠男/水木しげる/鈴木翁二ほか
内容説明
高度成長を謳歌した昭和から、終わりなき日常の平成へ。戦後の日本でマンガ家は“日常”をいかに見つめてきたか。その“深み”と“表層”を傑作マンガでたどるアンソロジー。
目次
第1章 日常の淵(楠勝平『暮六ツ』;滝田ゆう『寺島町奇譚』;つげ義春『チーコ』;永島慎二『仮面』;つげ忠男『或る風景』;鈴木翁二『東京グッドバイ』;安部慎一『やさしい人』;水木しげる『昭和百四十一年』)
第2章 日常の縁(つりたくにこ『僕の妻はアクロバットをやっている』;やまだ紫『性悪猫』;近藤ようこ『ものろおぐ』;高野文子『午前10:00の家鴨』;池辺葵『ねぇ、ママ』;安達哲『バカ姉妹』;いましろたかし『盆堀さん』)
著者等紹介
ササキバラゴウ[ササキバラゴウ]
1961年秋田県生まれ。まんが編集者。85年に徳間書店に入社し『月刊少年キャプテン』などの編集に加わる。92年から同誌編集長。95年からはフリーランスの編集者・ライターとして主にマンガ・アニメーションの分野で活動しており、98年からは専門学校・大学などで教育・研究活動にも携わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keroppi
68
「現代マンガ選集」第3巻のテーマは「日常」。収録作品は、「ガロ」からが多く、「COM」派だった私は初見の作家が多い。日常とは、丁寧に描かれた風景と心の動きのようだ。コマとコマの間から伝わってくる悲しみや生きていくことの苦しさ、そして人を思う優しさ。マンガには、こういう表現もあったのだなぁ。永島慎二に熱中していた頃を思い出した。また読み返してみようかな。2020/07/21
へくとぱすかる
57
コージー・ミステリ、「日常」が好きだ。しかし「日常」とは? 生活のヒトコマと言っても、人類の数と同数のバラエティにあふれ、決して微温湯の世界にとどまることなく、このタイトルと同様に深淵を覗かせているのではないだろうか。貧しさも豊かさも、時代によって移り変わっていくが、つねに現れる哀しさ、ひょっとして無常と言えるのかもしれない気配は、収録された作品の線やタッチが、みごとに表現している。見逃せないのは、何も描かれない余白の部分。余白に語らせるために、絵が描かれたかのようにさえ、思ってしまった。2020/09/27
Vakira
44
今回のテーマは「日常」。サザエさんの様なその当時の流行の反映はない。そのはず、伝説の月刊漫画雑誌「ガロ」掲載作品が多く紹介。その表現は1巻目と同様実験&挑戦。青春であったり、郷愁であったり、プチエロティックであったり、純文学的に。うんうん、あるある、あったあった、共感と感嘆。この頃のマンガ表現が妙に肌に合う。この企画嬉しく感謝。知らなかった作家もいる。今回の収穫、37歳で夭折してしまった、つりたくにこさん。絵が気に入ったので他の作品読んでみたい。2020/07/29
ぐうぐう
31
『現代マンガ選集』第3巻は「日常の淵」。編者のササキバラ・ゴウが解説で吐露するように、他の巻と比べると日常というテーマはかなり大人しいもののように感じられる。ところが、いざ読み進めていくと、親しみから来る味わい深さや、視点を変えることで生まれる奇想がもたらせる刺激や、日常ゆえの社会批評の有効性など、実に読み応えのある作品群に圧倒されるのだ。つげ義春や水木しげるといった大御所から、やまだ紫や近藤ようこに高野文子という有名どころの中にあって、池辺葵を忘れずに選出している辺りが素晴らしい。(つづく)2020/08/05
gtn
29
週刊ヤングマガジンに連載された「バカ姉弟」筆者、安達哲を、ガロを引き継ぐ者と認めた編者のセンスがいい。本書のどの作品もメジャー足り得ないが、メジャーにはない余韻がある。2021/12/13