出版社内容情報
奴隷の選び方から反乱を抑える方法まで、古代ローマ貴族が現代人に向けて平易に解説。奴隷なくして回らない古代ローマの姿が見えてくる。解説 栗原康
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
43
古代ローマ人の名が著者として挙げられているが、彼は架空の人物で、実際にはケンブリッジ大の先生が書いた本。なので本書は古代の様々な文献からの思想やエピソードを引きながら構築されている。奴隷を所有することの正当性はローマ人の頭の中では揺るぎなく、奴隷を罰する事にも疑問は呈さず、女奴隷と性的な関係を結ぶことは当然(妻側は✕)である、と言った現代では受け入れられない事柄を 取り除ければ、ちゃんと食べさせ、褒め、良好な関係を結ぶなどの方法論にはうなずけるところもある。2023/09/04
姉勤
38
二世紀ごろの代々ローマ貴族(階級はないが)だった人物が著した、奴隷に関わるハウツー本を現代風に訳した英学者の翻訳本。よくある管理職や社長向けのビジネス本のようだが、まあ実際はブラック企業の人心掌握術に近い。欧米的人権感覚と家畜扱いが矛盾なく同居したメンタルは、古代人に限ったことではなく人権や平等主義はある種の宗教にも見えてしまう。奴隷といえどもランニングコストは相当なものだが、待遇次第で、悪環境の場合は、外国人技能実習生とそれに近い人件費で働く日本人を想定するば、現代の奴隷と言える。2023/10/23
さとうしん
17
古代ローマ人の書の翻訳という体裁の古代ローマ奴隷入門。奴隷というのは我々の想像からかけ離れたものではなく、今の日本の社会でも似たような人々は存在しそうである。ことによるとそれは自分自身であるかもしれないという気付きを与えてくれる。各章末の本来の著者による解説は奴隷制に否定的な論調である一方で、奴隷制に肯定的な名目上の著者マルクスの主張をすんなり受け入れそうになるのが怖い。2020/05/04
ががが
9
古代ローマの架空の人物によって語られる奴隷論。奴隷の買い方から、拷問の必要性まで一通り書かれている。「主人と奴隷」の関係なんて遠い昔の話だと思ってしまうが、根本的には主従関係というものをどう考えるかとうことでもあり上司と部下などの身近な関係にも応用できる。主人と奴隷についての哲学はそのまま人間関係のひとつの形を考える上でも参考になり、対人関係スキルのノウハウとしても活かせそう。また奴隷を通して見えてくる古代ローマ社会もまた面白く、様々な読み方が可能な一冊。2020/05/27
カール
8
ローマ帝国の奴隷制度をまるで「漫画で学ぶ日本の歴史」みたいなノリで解説した本。しかも面白いのが、この本は「奴隷を使役した貴族(架空)が奴隷の運用方法をまとめたマニュアル。」という体で途中途中で現代の大学教授(実在)の解説を挟みながら進行する。時には暴力や拷問を辞さない一方で、成果を出した奴隷には褒美を与え奉公に報いる。この信賞必罰の姿勢や遵法精神。そして奴隷を決して見下さないフラットな心掛けは、歴史的な学びだけでは無く、ある意味「ビジネス書」的な学びも得られる事もまたこの本の面白い部分だ。おすすめの一冊。2023/04/19