出版社内容情報
今、注目を集める〈獅子文六〉とはどんな作家だったのか――。彼の人生を精細に追いかけ、再評価の続く作品群の理解を深める唯一の評伝の文庫化。
内容説明
『コーヒーと恋愛』『七時間半』など“静かなブーム”を呼ぶ“獅子文六”とはどんな作家だったのか。横浜での裕福な子供時代、パリ留学、演劇人、時代を射抜く批評性、根は優しいが辛辣な皮肉屋、大男で食いしん坊、そして運命的な三度の結婚。戦前と戦後の“二つの昭和”にときに翻弄され、ときに寄り添った人生を精細に追いかける唯一の評伝の文庫化。再評価以降の動向も踏まえた原稿も収録。
目次
1章 異国への扉―横浜
2章 郊外の家―大森
3章 芝居と恋愛―パリ
4章 昭和モダニズムと軍国主義―千駄ヶ谷
5章 戦後疎開―四国岩松
6章 敗戦と焼け跡―御茶の水
7章 もはや戦後ではない―大磯
8章 文豪と文六―赤坂
再びブームへ
著者等紹介
牧村健一郎[マキムラケンイチロウ]
1951年生まれ、神奈川県出身。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞入社。校閲部、アエラ編集部、学芸部、be編集部などに在籍、記者として「昭和史の検証」や書評欄、夏目漱石などを担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーイチ
34
獅子文六復活の仕掛人と目される筆者は小生と同世代。筆者の見立てに拠れば「親が読んでたのを記憶している第二世代」ってことになるらしい。評伝なのだが伝の部分が多い、それでも文六センセイの生涯が作品を通じて読めるのはありがたい。意外だったのが最終章辺りで結構、新知識が得られたこと。新聞投稿に批判が殺到した、なんてその頃は子供だったけど、今なら分かる。筆者の引用している資料が今後役立ちそう。文学座の分裂とかは今となっては遠い昔。続く2020/04/06
Inzaghico (Etsuko Oshita)
8
獅子の作品は、からりとした都会的なユーモアの中からふと覗く苦い笑いや諦念に中毒になる。特に第二次世界大戦前の作品にそれが強く感じられるが、最近の発見世代には『コーヒーと恋愛』と『七時間半』といったさらに都会的な味に磨きがあかかり、ハイカラな作品のほうが人気なんだそうだ。わたしは『てんやわんや』、『自由学校』、『沙羅乙女』、そして『悦ちゃん』が好きだ。「ママハハというのは、ママとハハが一緒になったンだから、一番いいお母さんなのよ。みんな田舎ッ平だなア、なんにも知らないや!」という啖呵が切れる小学生! 2020/03/07
Shinya Fukuda
3
作家の目から見た昭和B面史だろうか。著者は獅子文六に惚れ込んでいる。こんな面白い作家が忘れられているなんて勿体無いと評伝を書いた。漱石との共通点を挙げている。確かにと思った。獅子文六は演劇から始まって新聞小説へと軸足を移した。私小説作家ではなく文壇から距離を置き、広く大衆に訴えかける小説を書いた。純文学ではないため1ランク低い作家と見る向きもあったが実際は留学経験もある当代一のインテリだった。名文家で時代の流れを掴むのが巧みだった。ジメジメした所がないので読後感が爽快。今ブームだそうだが当然かもしれない。2022/04/29
栄吉
3
★★★☆☆ 獅子文六先生の人生、人柄にふれる1冊。他の読んでいない作品も読みたい。獅子文六展に行きたかったが、今の横浜に行くのを躊躇中。2020/02/13
オペラ座のカニ人
0
フランスパリに獅子文六先生がいたことを鹿島茂さんのパリの日本人を読んで知り、娘と私、信子、自由学校を読んでこの本に辿りついた。次は 父の乳を読んで晩年の獅子先生について考えたい。2021/05/22