出版社内容情報
人気の歌人の第二歌集。東直子論(花山周子)を収録。穂村弘との特別対談で言葉選びに柔軟なセンスを持ち、短い物語のような東ワールドを解説。
内容説明
現代短歌の新しい潮流となった歌人・東直子の第二歌集。第一歌集『春原さんのリコーダー』から五年間の491首を収める。柔らかな空気をまといながら、時にハッとさせられる表現や心の奥を覗くような影を含んだ歌など、独自の感覚に充ちた一冊。花山周子の評論、穂村弘との特別対談により「ママンあれはぼくの鳥だねママンママンぼくの落とした砂じゃないよね」などの不思議な作品の謎に迫る。
目次
1(海の椅子;嗽薬;つがいのナイフ ほか)
2(雨が降りさうで;暴暴茶;国見山 ほか)
3(きつねのこころ;わたしの鈴;夜の額 ほか)
著者等紹介
東直子[ヒガシナオコ]
1963年生まれ。歌人・作家。歌集に『春原さんのリコーダー』『十階』など。2006年に『長崎くんの指』(文庫『水銀灯が消えるまで』)で小説デビュー。1996年、第7回歌壇賞、2016年、『いとの森の家』で第31回坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
60
自然物を題材に取った歌が多いが、主体はあくまで人間。やはり言葉のチョイスに新鮮な驚きを感じる。加えて文語体、旧字体、外国語など新たな表現の試みもなされている。穂村弘さんとのロング対談も付き、歌をよむ喜びを感じられる作品集。個人的には第一歌集より良い意味で難解だと思う。読んでいる目がときどき止まってしまう。2019/11/10
kaizen@名古屋de朝活読書会
44
#東直子 #短歌 水枕鳥の産卵風車小屋花野武蔵野無人改札 ドアに小さな手紙を貼って町を出た画家の残した向日葵の種 枇杷の木の根もとの白き貝殻を夢のしるしとして眠りおり2020/03/21
シャコタンブルー
40
『電話口でおっ、て言って前みたいにおっ、て言って言って言ってよ』 『遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた』 言葉の使い方がユニークで、時にハッとさせられる東さんの第二歌集。歌の数々から、その背景や情景を想像しながら存分に楽しんだ。 2020/01/30
ポテチ
33
人間が生き物に乗り移ってるのか、生き物が人間を見ているのか幻想的な歌に混ざり、リアリティー濃いめの歌も。「電話口でおっ、て言って前みたいにおっ、て言って言って言ってよ」2020/05/16
ちぇけら
27
あいまいな感情ばかり星の砂みたいに詰めて〈これが・きみだよ〉。はなびらが、はらはらとみずたまりに降りたった、その音でねむりからさめた祝日だった。遮光カーテンにくるまれたような心地で、すこし猫目のあなたが、このまま目覚めないかもしれないと思っている。ひんやりした首すじの静脈をそっと撫でると、あなたのあんなにあつかった体温が指先にぶりかえす。剥がれかけた去年のカレンダーについた丸の数をかぞえて、こんなにもわたしは、あなたに愛されていたのだったね。さびしいよ、呟くととくとくとさびしさが満ちてさびしいよ。2020/04/05