出版社内容情報
不思議な風景を紡ぎ出し、若者にも人気の歌人・東直子のデビュー歌集。刊行時の栞文に加え、花山周子による東直子論、川上弘美との対談も収録。
内容説明
人気歌人で、作家としても活躍している東直子のデビュー歌集。代表歌「廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て」ほか、シンプルな言葉ながら一筋縄ではいかない独特の世界観が広がる347首。小林恭二、穂村弘、高野公彦らによる単行本刊行時の栞文に、新たに花山周子による解説、川上弘美との対談も収録。
目次
1(ひやしんす;草かんむりの訪問者;ひんやり風の吹く朝に ほか)
2(へるめす歌会;et al.;つゆのてふてふ ほか)
3(アプリコット・カラム;ピンク・スノウ;ふりこ ほか)
著者等紹介
東直子[ヒガシナオコ]
1963年生まれ。歌人・作家。歌集に『青卵』『十階』など。2006年に『長崎くんの指』(文庫『水銀灯が消えるまで』)で小説デビューし、以後、多数の小説作品、またエッセイ集などを発表。1996年、第7回歌壇賞、2016年、『いとの森の家』で第31回坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keroppi
79
映画「春原さんのうた」を観て、その原作とされる歌が収められている東直子のデビュー歌集である本書を読んでみた。どの歌も平易な言葉のつながりでありながら、思わずハッとなったり、その情景が浮かんできたり。一瞬考えてしまうものもあるが、想像を掻き立てられる歌が多い。この歌から、あの映画が生まれてきたのに妙に納得してしまった。2022/09/21
佐島楓
66
東直子さんのデビュー歌集。ものごとの細部をクローズアップしてから、鮮烈なイメージの跳躍をみせる歌が多い。言葉のセレクトにいちいち驚いたり唸ったりさせられるところも魅力。穂村弘さんから短歌の世界に足を踏み入れたけど、これはハマらないで何とする。詠むことはできないだろうけど、読むのはとても楽しい。2019/10/18
kaizen@名古屋de朝活読書会
49
短歌 そぼそぼと降る雨音のおだやかさ愛した人の悪口を言う ゆだちの生まれ損ねた空は抱くうっすらすいかの匂いのシャツを フラスコの中は今でもひんやりと緩衝液に満たされている 井戸の底に溺死しているおおかみの、いえ木の枝に届く雨つぶ 日曜日に似合いの空と隅田川ぽんぽん船に乗る鳩もいる どうぞどうぞ上がって下さい熱い熱い烏龍茶などお淹れしますよ2020/03/21
シャコタンブルー
35
『「・・・び、びわが食べたい」六月は二十二日のまちがい電話』 『柿の木にちっちゃな柿がすずなりで父さんわたしは不機嫌でした』 作者の第一歌集だが、純粋で魅力的な感性を自由に表現して、言葉がきらきらと輝いている。読んでいて面白くもあり、何を言っているのか分からない作品もあり、それもまた楽しい。 『じゅっと燃える線香花火の火の玉の落ちる速度で眠りましたよ』 いとおかし。
ポテチ
28
「ひまわりの種を数えきれなくて資料室には子供が九人」「こわれもの預かってます木村さん あなたの眠るベッドの下で」がお気に入りです。2019/12/22