出版社内容情報
日本が戦争へと傾斜していく昭和前期に、ひとり敢然と軍部を批判し続けたジャーナリスト石橋湛山。壮烈な言論戦を大新聞との対比で描いた傑作評伝。
内容説明
いまこそ読み直したい不屈の言論魂!昭和初期、敢然と軍部を批判し続けた壮絶な言論戦を、日和見な大新聞との対比で描いた傑作。
目次
序章 その男性的気概
第1章 「大日本主義」を捨てよ
第2章 統帥権干犯の残したもの
第3章 日本は満洲を必要とせぬ
第4章 理想国家とは何なのか
第5章 天下を順わしむる道
終章 醜態を示すなかれ
著者等紹介
半藤一利[ハンドウカズトシ]
1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)等がある。2015年、菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
36
満州事変の前後、軍部やマスコミそしてそれらに煽られた国民のいけいけドンドンの嵐のような世論に抗して、冷静な経済観察を根拠に満州、朝鮮、台湾の放棄を主張し「小日本主義」を唱えたジャーナリスト石橋湛山の言説を追いながら、当時の新聞に代表される報道機関の背信を検証する。氏の主張の正しさは戦後の敗戦・日本の経済的躍進で大部は立証されている。戦後、朝日新聞はその報道ぶりを、もろもろの情勢・事情から「すべて沈黙を与儀なくされた」と反省するが、本書を一読すると報道機関自ら軍国の炎に油を注いだ実態が明瞭だ。(コメントへ)2023/10/01
風に吹かれて
18
昭和五年のロンドン軍縮会議、六年の満州事変、七年の満州帝国成立、八年の国際連盟脱退という時期における日本のジャーナリズムを描写。その後の日本の進み行きが見えていたかのような石橋湛山の先見性がある論説と言論の自由を堅持する姿に感銘を受けるが、それ以上に軍部宣伝紙であるかのような主要新聞の報道に驚き呆れ、そして恐怖を感じた。マスコミに煽られた国民は軍部の、とりわけ関東軍の横暴を受け容れていく。→2021/09/06
Satoshi
13
戦後に短い間で首相をやった石橋湛山。不勉強だったので、彼がマスコミあがりの言論人であり、軍部の暴走と孤立する日本に警笛を鳴らしていたことを知らなかった。総理就任時に体調を崩さなければ、彼への評価は全く異なるものだっただろう。彼の満州に関する言説を読めば、何のための日中戦争だったのだろうと思ってしまう。2023/06/18
ta_chanko
12
小日本主義・脱植民地・脱帝国主義。過熱していく新聞報道や世論に流されることなく、軍部の圧迫に屈することなく、自説を主張し続けた東洋経済新報社の石橋湛山。戦後も理不尽な公職追放に遇いながらも、その後、政界に進出して首相に就任。すぐに体調不良で退陣したが、長く首相を務めていたら…と考えてしまう。危機の時代にあっても流されない、時代を俯瞰した骨太のジャーナリズムが今こそ求められる。2020/04/01
ダージリン
8
石橋湛山は地元の高校出身ということもあって、以前から関心を持っている。何冊か著作も読んでいるが、本当に尊敬すべき人だと思う。あの時代に時局に阿ることなく、ぶれずに主張を続けたのは並大抵のことではあるまい。それにしても湛山の鳴らす警鐘空しく戦争へと向かっていく様は何ともやるせない。軍部の暴走だけでなく、当時の新聞も牽強付会、独善的な理屈を並べてて世論を煽り、国民もそれに乗っかり、陶酔しながら戦争へと突き進んでいく姿に慄然とする。この流されやすさは実に怖い。この轍を踏まないよう肝に銘ずるべきだろう。2019/10/05